泰有社ビルの魅力、おしえますvol.1(ビジョン編)

2020.10.30 泰生ビル 泰生ポーチ トキワビル/シンコービル 弘明寺プロジェクト

泰生ビル屋上にて (2018年撮影)photo:菅原康太

 

不動産事業をとおして、コミュニティを育むまちづくりを目指す泰有社。関内エリアに4棟、弘明寺エリアに3棟のビルを所有し、入居アーティスト/クリエイターとともにさまざまな活動に取り組んできました。本シリーズでは、そんな泰有社のビジョンや各ビル個別の魅力をお伝えしていきます。

 

 

ビルオーナーとして築き上げた、入居者との顔の見える関係

昭和41年に弘明寺を拠点として創業した泰有社。不動産事業をとおしてまちの未来を考え、コミュニティを育むまちづくりに取り組んできた。
現在は東京と横浜に複数のビルを持ち、横浜では関内エリアに4棟、弘明寺エリアに3棟を所有。横浜の各ビルには、多くのアーティスト、クリエイターが入居していることでも知られる。その数は賃貸借契約ベース51団体 シェアを含むと87団体にのぼる。

2020年度はコロナ禍のなかで飲食店の撤退や、アトリエとして使用していたアーティストの退去も若干あり、泰有社も一定の影響を受けた。それでもアーティストやクリエイターからは続々と入居の相談が舞い込み、現在、入居率は回復を見せているという。
このような時期だからこそ、これまで積み上げてきた同エリアでの幅広いネットワークが、目に見えるかたちで泰有社の活動を支えている。

トキワビル/シンコービルのオープニングパーティ集合写真(2018年撮影)photo:菅原康太

 

人が主役のオーナー業

「入居者との顔の見える関係」を大切にしている泰有社だが、その根底には「人が主役のオーナー業」を展開しようというビジョンがある。
昨今、横浜市庁舎の移転をはじめ、高層マンション、ホテルの建設ラッシュなどにより、関内・馬車道エリアは目覚ましい変化を遂げている。これまであったビルが壊され、新たに建てられたビルが目を引く一方で、泰有社がこだわってきたのは古くなったヴィンテージビルを活かして使うことだった。
泰有社の持つ関内エリアのビルはいずれも築40年〜60年だが、古いビルの趣を活かし、リノベーションして貸し出している。そしてそこに集う人たちとともに、新たな付加価値を見出すビジネスモデルを確立した。

泰有社がこのような手法に至る今から10年以上前は、関内のビルも賃貸不動産会社に委託をして、入居者を募る一般的な大家業のスタイルをとっていた。だが古い物件はなかなか入居者がつきにくく、2008年のリーマンショック以降は泰生ビルの空室率が30%にのぼることもあったのだとか。
このような経緯から、不動産会社任せにするのではなくオーナー自ら動こうと、入居者と賃貸契約を直接結ぶ、現在の手法で運営するようになった。

泰生ポーチオープニングパーティの様子(2015年撮影)photo:株式会社オンデザインパートナーズ

そんな泰有社のビジョンを体現するもののひとつが、2か月に1回程度、定期的に開催してきた「入居者交流会」や各種パーティなどである。泰有社が主催の交流会には、毎回ビルの垣根を超えてさまざまな人たちが集まり、情報交換ができる場となっている。
現在はコロナ禍で気軽に集まることが難しいのが現状だが、こういった場をきっかけにクリエイター同士のコラボレーションや、泰有社とクリエイターの新たなプロジェクトが生まれているのも、泰有社物件の特徴だ。

 

アーティストやクリエイターのセルフリノベーションにより、個性的な賃貸物件に

ヴィンテージビルを活かして使い、オーナー自ら入居者と顔の見える関係を築く手法は、多くのアーティストやクリエイターの共感を得ることになった。
借主が自分たちでリノベーションすることを条件として比較的安価に貸し出す泰有社のヴィンテージ物件に魅力を感じるアーティスト・クリエイターの需要が高いという手ごたえもあった。

このような活動に至るそもそものきっかけは、公益財団法人横浜市芸術文化振興財団のアーツコミッション・ヨコハマが実施していた、インフラ整備のリノベーション助成だった。泰生ビルのリノベーションのために取得した本助成金は、アーティストやクリエイターを誘致することが条件となっていたのだ。
もともとは横浜のアーティストやクリエイターとのネットワークがなかった泰有社だが、横浜コミュニティデザイン・ラボとの出会いを契機とし、またたく間に幅広いネットワークを築いていくことに。

その後、泰生ビルの手法をモデルとして、2014年には泰生ポーチ、2016年にはトキワビル/シンコービルを取得するに至る。

 

泰生ポーチ204号室、照明デザイナーのmantle lightingによるセルフリノベーション(2018年撮影)photo:加藤甫

 

シンコービル401号室、トートアーキテクツ LABによるセルフリノベーション(2020年撮影)photo:加藤甫

セルフリノベーションされた各部屋は、将来的に入居者が退去した際にも賃貸物件としての付加価値が上がる。クリエイターやアーティストの手による自由なセルフリノベーションは、泰有社にとっても未来への投資になっている。

 

まちの未来を考える――人とまちの共存を目指して

泰有社・二代目代表取締役の水谷浩士さんは、泰有社の理念は「人とまちの共存」だと言う。
不動産事業をとおして、入居者や地域住民とともにコミュニティを育み、人々の温もりあふれるまちづくりのために活動していきたい――。そんな思いから、泰有社はオーナー業の枠を超えて、関内エリアでは泰生ビルの屋上緑化と壁面緑化(TAISEI GARDEN Project、KANNAI NIWA STAND)、保育園(ピクニックナーサリー)の誘致、泰生ポーチの路面店の活性化(泰生ポーチ フロント:パン屋のおやじ、学童のピクニックスクール)など、まちにかかわるさまざまなプロジェクトに取り組んでいる。

泰生ビルに入居する保育所のピクニックナーサリー

一方、弘明寺エリアでも、泰有社が所有する水谷ビル2階にはシェアハウスの「水谷基地」が、そして1階には「小商い」のためのシェアスペース「アキナイガーデン」がオープンし、弘明寺のまちに活気をもたらしている。

多拠点型の居住を狙いとしたシェアハウス型住居「水谷基地」(2018年9月撮影)photo:加藤甫

このように概観してみると、泰有社のオーナー業は古いものを活かして使うビジネスモデルで、コミュニティを育むまちづくりに取り組んできたことがわかる。入居するアーティストやクリエイターとともにビルをつくっていくことで、単なる建物ではない個性がそれぞれのビルに生まれているのが、泰有社物件の特徴と言える。その魅力は、これからも新たな人たちを呼び込んでいくだろう。

※本シリーズでは次回以降、関内と弘明寺の各ビルの魅力に迫ります。お楽しみに!

 

文:及位友美(voids)

 

その他泰生ビルについてはこちらから

>