泰生ポーチ
入居者ファイル#09
松本祥孝さん(マツモトコーヒーロースターズ)

2019.06.21 泰生ポーチ

「泰有社」物件に魅せられた人々を紹介する「入居者ファイル」シリーズ。
今回は泰生ポーチに拠点をおく「マツモトコーヒーロースターズ」の松本祥孝さんにご登場いただきます。

 

 

子どもの頃から身近にあった、写真とコーヒーがライフワークに

カメラマンとコーヒーロースター。泰生ポーチ2階の一室に本格的なコーヒーの焙煎機を構える松本祥孝さんは、そんな二つの顔を持つクリエイターだ。

主に「料理」を専門とするカメラマンでありながら、オリジナル焙煎のコーヒーブランド「マツモトコーヒーロースターズ」のオーナーとして、オーダー式のコーヒー豆販売や、珈琲講座などを開く松本さん。横浜では関内外オープンや北仲COOPのイベントなどに出店しており、「コーヒーの松本さん」として知る人が多いかもしれない。

本業のカメラマンの仕事では、『dancyu』(プレジデント社)や『オレンジページ』(オレンジページ)など誰もが手にしたことがありそうな雑誌をはじめ、1週間パリを旅しながら料理を撮影した書籍『パリで「うちごはん」そして、おいしいおみやげ』(小学館)など、幅広い媒体で活躍する。最近ではNHKのテレビ番組『私の好きな民藝』(NHK出版)から派生した、冊子の撮影も手掛けた。

カメラマンにとって、膨大にあるだろう被写体の中でも「料理」というスペシャリティを松本さんは持つ。松本さんが20代の頃に師事したのは、カメラマンの志民賢市氏である。さらにその師匠にあたる佐伯義勝氏は、弟子が50人ほども居たという料理写真のパイオニアと言われる人だ。

「あるとき師匠から『まっちゃんは人物とかよりも料理が良いんじゃない』と言っていただいて。両親とも料理好きだったので、自分も受け継いだ何かがあったのかな。20代は修行の時期でしたが、30代になってからカメラマンとして独立しました」

野毛の老舗ジャズ喫茶「ちぐさ」には隔週金曜日にバーテンダーとして立つという、お洒落な松本さん

 

「写真」と「コーヒー」は、松本さんにとって子どもの頃から身近にあったもの。その理由は写真やコーヒー、蘭や鉄道模型など多趣味だった祖父の存在だ。

「中学生のときに、おじいちゃんからペンタックスのSVという古いカメラをもらったことがありました。大学を受験するときに美大なら行ってみたいと考え、写真学科があった日本大学芸術学部を受験したんです」

日芸時代、松本さんはコーヒー研究会に所属した。後にライフワークとなる写真とコーヒーへのぶれない芯がうかがえる。

 

 

泰生ポーチとの出合いから入居まで

横須賀出身の松本さんにとって、横浜は「お出かけに行く街」だった。

「20代にぶらぶらしていた時期は自分の生活圏内を撮っていましたが、横浜は分かりやすく絵になる風景が多い街でした」

現在の「象の鼻テラス」あたりにあった倉庫を、松本さんが撮影した写真

 

フードカメラマンとして独立後15年間、松本さんは東京を拠点に活動していた。だが2011年の東日本大震災で事務所が水没したこともあり、今後の生き方を考えるようになったという。

「年齢的なこともありますが、震災には少なからず影響を受けました。写真と並行して、自分が一生携わることができる仕事について考えるようになったんです。それはコーヒーしかないなと」

それでも150万円かかる焙煎機の購入を決意するのに、2年程かかった。購入後はお店を持とうと画策したが、まずは自宅でコーヒーの焙煎をはじめる。そんな松本さんのコーヒーへの情熱を聞きつけたのが、数年前から一緒に仕事をしていた、泰生ポーチ3階に事務所を構えるフロッグス株式会社の上島洋さんだった。泰生ポーチ1階で「Good Morning Coffee」を開いていた上島さんらから、松本さんに参加のお声がかかる。これが松本さんと泰生ポーチの出合いとなった。「Good Morning Coffee」はしばらくして終了したが、その後、泰生ポーチの部屋に空きが出たタイミングで入居を決めた。

「シェアオフィスのような場にあまり馴染みが無かったので、関内のさまざまな取り組みは新鮮に感じました。とにかくユニークな人が多く集まっていて。泰生ポーチのたたずまい、築50年以上の建物が持つ雰囲気や、コンパネむき出しの部屋の感じも含め、とても魅力を感じました」

自宅に置いていたときは布団の隣にあって、寝食を共にするように過ごしたという焙煎機

 

 

「マツモトコーヒーロースターズ」をとおして感じる、関内エリア独特のコミュニティ

飲食の出来るお店をオープンするためには、食品衛生法によるさまざまなハードルがある。またお店を持つとなると、カメラマンの仕事がある松本さんが毎日お店に立てるわけではない。そこで泰生ポーチには焙煎機を置き、オーダー式のコーヒー豆販売店として運用することにした。

「関内エリアでは、オンデザインさんをはじめクリエイターの方々がイベントをオーガナイズしているので、気にかけていただいています。イベントなどにコーヒー絡みで呼んでいただけると、人のつながりが財産だなと感じますね」

通りを歩けば、クリエイターやアーティストの知り合いに会う。「ちょっとコーヒー飲んでいけば?」と誘える気軽さがちょうどいい。関内のこういった感覚は東京ではありえなかったと話す松本さん。泰生ポーチに入居している、価値を感じる瞬間だ。

泰生ポーチの一角に、こんなに本格的な焙煎機があることに誰もが驚く。夜になるとシャンデリアが灯り、昼とは違う雰囲気をかもし出す

お客さんには「探偵事務所みたいだね」と言われる部屋。香港映画のような雰囲気が、松本さんは気に入っているのだそう

 


PROFILE
松本祥孝(まつもと・よしたか)/有限会社マット取締役。日本大学芸術学部卒。1997年にフリーカメラマンとして独立、料理や旅の写真を手がける。2015年からはマツモトコーヒーロースターズとしてコーヒー豆の焙煎をスタート。

 

取材・文:及位友美 /写真:加藤甫

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