泰生ビル 入居者ファイル#28 日野公三さん(明蓬館高等学校 横浜・関内SNEC/CONEC)

2022.03.03 泰生ビル

「泰有社」物件に魅せられた人々を紹介する「入居者ファイル」シリーズ。今回は、発達に課題をもつ高校生が特別支援付きの普通科やプログラミングコースの高校教育を受けることができる通信教育拠点、明蓬館高等学校校長で同校横浜・関内SNEC/CONECセンター長の日野公三さんにお話を伺いました。

 

まちのなかに溶け込む学校

関内のオフィス街のど真ん中、泰生ビルの3階に“学校”があるのをご存知だろうか。同階のほかの部屋と同じく元は居室だった場所をリノベーションして2017年にできたのが、「明蓬館高等学校 横浜・関内SNEC(すねっく:スペシャル・ニーズ・エデュケーション・センター)」。学びにくさを抱える生徒のための通信教育拠点だ。

横浜市内在住の日野公三校長と泰生ビル2階のNPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボとの縁がきっかけで、クラウドファンディングを実施して工事費等を集めて作られた同所。もともと泰生ビルに入居し、現在はトキワビルに拠点を置く古市久美子建築設計事務所が内装を手掛けた。照明デザイナーの久保隆文さんによる間接照明とも合わさり、杉の間伐材の温かみが感じられる空間となっている。

「ワイワイガヤガヤの熊さん八つぁんが多い場所に学習センターを作ることができて本当に光栄です、と開校記念式典でも申し上げたんですよ」と話す日野さん。教育や福祉、医療の分野の事業者と提携し全国に40以上の拠点をもつ明蓬館高校SNECだが、「これほど人間関係の濃密な場所に直営の学習センターを置くというのは初めてだったので、不安は少し、まあ期待のほうがはるかに大きかったですかね」。この場所に期待するのは、「働く人」や「就労の場」とつながることだ。

泰生ビル内のファブラボ関内で行われた講座*

 

IT業界から教育の世界へ

30代の後半はパソコン通信に関わる第三セクターの企業で取締役を務め、自身もパソコン通信にハマっていたという日野さん。その中の“サロン”には不登校の子どもも多く、だんだんと気になり始めたそうだ。

「サロンで子どもたちが議論したり学んだりしていることを学習として認められれば、単位が発行できるんじゃないか。そんな思いつきからオンライン教育に目覚めて、アメリカに視察調査にも行きました。結婚した相手が小学校の先生だったことや、子どもが幼少期、発達上の課題をもっていたことも、教育に携わる決め手になりましたね」

1999年に独立し、株式会社アットマーク・ラーニングを設立。2004年には株式会社として初めて、eラーニングを基盤とする高校を石川県白山市に開校した。2009年、発達障害の傾向がある子どもたちを積極的に受け入れる通信制の高校として、明蓬館高等学校の本校舎を福岡県田川郡川崎町に開校。2013年度以降、特別支援教育コースであるSNECの拠点を全国各地に増やしている。そのスピード感とフットワークの軽さは、民間企業ならではだ。

関内だけでも、現在は中等部をメインとした泰生ビルの教室「BAY1」に、高等部メインの弁三ビルの教室が加わった。合わせて35人の生徒がさまざまなペースで通い、日野さんを含む8人の職員に加えて2人の心理士がいる。4月からは、横浜スタジアムのすぐ横に位置する山下町の新しい教室も稼働予定だ。

さらに、昨年4月からは品川と国立市・横浜でプログラミングコース「CONEC(こねっく:コーダーズ・ニューロハックセンター)」をスタート。不登校傾向や学び辛さを抱える生徒の中でも、ゲームやパソコンに多くの時間を費やしてきた生徒たちにそのスキルや興味関心を活かしてもらおうと設置した。既にホワイトハッカーの企業でインターンとして活躍する生徒も出るなど、成果を挙げている。

 

地域の歴史とつながりを大事に

昨年11月のイベント「関内外OPEN!」では、CONECの生徒たちがドローンの体験ブースを出展。小さい子どもたちに操縦を教えたり、ほかの出展クリエイターと交流したりする機会となった。関内や周辺エリアのクリエイターが多数参加するこのイベントには明蓬館高校も毎年参加し、作品展示などを行っている。

関内外OPEN!13の様子

ビル内のつながりもとことん活かし、ものづくりや社会科見学の機会には事欠かない。アーティストやカメラマンによるワークショップだけでなく、屋上で養蜂家のハチミツ作りを手伝ったり、竹やぶから切り出した竹で流しそうめんをやったりとさまざまな活動を実施してきた。

泰生ビル屋上流しそうめんの様子*

日野さんがさらに4月から始めようと考えているのが、関内にまつわることを学ぶ「関内学」。周囲のキーパーソンたちで世話人会をつくり、地域の歴史などを学んでいく予定だという。

「関内には学習素材が山程ありますからね。せっかく学習センターが関内にあるのに、関内のことを知らずに卒業してしまうのはもったいない。いろんなことの始まりの地でもありますし、せっかくまだまだいろんな専門家がいるので、皆さんをお招きしていきたいと思っているんですよ。

いずれはこの街で働きたい・この街に住みたいという生徒や、このビルで活躍している方々の跡継ぎのような人が今の高校生の代から出てきてくれたら理想ですね」

 


PROFILE
日野公三[ひの・こうぞう]
明蓬館高等学校校長・理事長兼横浜・関内SNEC/CONECセンター長
広域通信制の明蓬館高校に併設する形で、SNEC(スペシャルニーズ・エデュケーションセンター、発達障害生徒のための補習支援・伴走センター)を2017年に関内に開設、今では全国29か所に開設。著書に「発達障害の子どもたちの進路と多様な可能性」(WAVE出版)。石川県白山市教育特区アットマーク国際高校理事長、NPO日本ホームスクール支援協会理事長。

 

取材・文:齊藤真菜
写真:大野隆介(*をのぞく)

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