水谷基地
弘明寺のまちを
“使って楽しむ” 地域拠点

2019.02.01 弘明寺プロジェクト

泰有社が弘明寺商店街に持つビル3棟のうちの一つ「水谷ビル」で2018年10月、シェアハウス「水谷基地」が始動した。かつてパチンコ店の寮として使われていた2階の住居3戸をつなげた約165平米の“敷地”には、地域の人も入って来られるような“庭”に見立てた共有部と、その周りに設置した計5部屋の“家”がある。うち1部屋に自ら住みながら管理人を務めるオンデザインの塩脇祥さんに、基地を案内してもらった。

 

 

弘明寺だからできる“実験”

マンションの一室の扉を開けると各部屋のあいだに“庭”が広がる

水谷基地の“庭”は、マンションの廊下からドア一枚を挟んでそのままつながるように広がっている。開放的な共有部に光が入れば北側の部屋も明るく感じられると、ベランダのある南側の大部分が“庭”に接しており、路地のような共有部の両側に縁側をイメージした各部屋への入り口がある。キッチン台はまちの人が思わず使いたくなるようにと、一般的な住宅にあるものよりかなり大きいサイズとなっている。

“路地”に面した部屋の外側はいわば“玄関先”。少しずつ植物や棚などが増えている

「ここは具体的な設計に入る前にあまり使い方を細かく決め込まず、まずはイベントをやってみよう、空間をつくってみよう、僕が入居してみよう、と実践を重ねてきました。決まったターゲットが見つけづらいものの、弘明寺は人の賑わいがあるので『こういう場所をつくれば誰かが使ってくれるだろう』という安心感がありました」(塩脇さん)

 

基地からまちへ、まちから基地へ

「水谷基地」オープニングイベントの様子

実際、共有部は弘明寺にある横浜総合高校の「ようこそカフェ」の展開を考える会議の場所になったり、多業種の若手クリエイターたちがキッチンで料理されたご飯付きの勉強会を開く場になったり、友人がテント持参でキャンプしに来たりと、柔軟な使い方を試したい人が集まるようになってきた。
一番の利点は、2017年10月に開いた地域参加型イベント「One Day Open!!」のように、同ビル1階の店舗スペースやほかのビルの空きスペースも組み合わせた使い方ができること。1階は日替わりオーナー制度を採用して運用していく予定で、水谷基地はあくまで「弘明寺のまちで活動していくための基地」だという。
「ここですべてを完結させなくても、地域の人がやっていることを“拡張できる”場所として運用していけたらと考えています。ここで考える、何かをつくる、イベントを開く、イベントのための料理をつくる、イベントで物を売る、そういった活動に、シェアハウスの住人を含めて関わっていければと良い思います」(塩脇さん)

オープニングイベントでは住人メンバーもトーク。写真は千代田彩華さん

 

泊まることでまちに愛着を持つ

現在、塩脇さんの部屋は友人数人とシェアしており、ほか3部屋にもそれぞれオンデザインの若手スタッフが入居している。完全に定住しているのは関西から出てきた1人のみで、塩脇さんを含む3人は首都圏に実家があり、週に1、2回は帰っているそうだ。

室内には必要に応じて“ちょっと”カスタマイズできるユニット収納や床下収納を配し、さまざまな使い方に対応

「僕のこの場所の使い方の原点は学生時代にあります。大学時代は実家から1時間弱かけて通っていたので、忙しいと学校に泊まっていたんですが、友達何人かと大学の近くにアパートの1部屋を借りてシェアを始めたんです。好きなものだけ置いて、泊まりたいときだけ泊まって。そういう本当に基地みたいな使い方が、僕には一番合っていたし、そうすることでまちを知る機会にもなった。一方で、実家はよく友達を呼んでいて、誰かが今日泊まりたいなあと言うと『歯ブラシあるよ』って親が差し出してくれるような家だった。
バスタオルと歯ブラシくらいがあれば、ちょっと遠くて終電が気になる友達もふらっと来られますよね。日帰りでなく、まちでご飯を食べて銭湯に入って、寝て、『まちを使った』感覚をもつことで、その場所により愛着が持てると思うんです。そうするとまたそこに行きたいと思えるし、弘明寺に来た人にもそうなってほしい」(塩脇さん)

塩脇さん(左)と一緒に部屋をシェアする仲間

今もそれぞれの友人や終電を逃した同僚が泊まっていくことがあるが、残りの1部屋はそうした様子をみるとちょっとした宿泊の需要にもうまく応えられるのではと、活用方法を検討しているそうだ。
「出入りする人が増えるとセキュリティの問題等があるので、そういったことは一つひとつクリアする必要があります。今なら住人同士の話し合いもしやすいので、彼らさえ許容してくれればいろいろ実践していくことができる。そうやって少しずつわかりやすい形にして、まちとつながっていきたいですね」(塩脇さん)

 

取材・文:齊藤真菜/写真:加藤 甫

 

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