水谷ビル
アキナイガーデン
昔ながらの商店街から発信する「商い暮らし」

2019.07.05 弘明寺プロジェクト

 

弘明寺商店街と大岡川が交わる角地にある「水谷ビル」。今回は2階のシェアハウス「水谷基地」に続いて1階にオープンした小商いのレンタルスペース「アキナイガーデン」のオープニングにお邪魔してきました。

 

 

皆が集まれる“庭”

 

地下鉄と京浜急行の駅に挟まれ、絶えず地元の人が行き交う弘明寺商店街。一本の長い通りの途中、大岡川をまたぐさくら橋は、いつも買い物客が座って休憩したり、おしゃべりに興じたりするスペースとなっている。大きなガラス窓からその橋を臨む角の小さなショップは、募集をかければすぐに埋まる一等地ながら、より良い活用方法を模索しようと、泰有社が温存してきた物件だ。

オンデザインパートナーズに所属する神永侑子さんとオオザトスタジオの梅村陽一郎さん

 

満を持して入居した建築家の神永侑子さんと梅村陽一郎さん夫妻は、「生活の延長で、同じ趣味の人が集まってわいわいしたり、持ち寄った雑貨や植物などを物々交換したりできる庭のような場所がほしい」と、ここ数年、住居と店舗が一体となった物件を探してきた。直接続いた部屋ではないながらも、同じ建物の3階に住居が借りられる水谷ビルで「アキナイガーデン」を開こうと計画をスタートしたのが2018年11月。「商い暮らし」の1つのモデルを目指して2人で自ら内装を設計し、外壁の塗装など自分たちも手を動かしながら、6月1日のお披露目にこぎつけた。

シックなグレーに2人が好きな植物が映える外観は、にぎやかな商店街の中でかえって目を引く

 

 

「通り」と「間」

 

ガーデンの名の通り、店内はアウトドアをイメージ。10.5平米ほどの小さな店ながら、砂の樹脂を使った床や、木目が見える塗装、屋外用のビニールカーテンなど、細部でそれを表現した。キッチンとトイレ、物販用の棚があり、窓辺に数人が座れるようになっている。

オープニングには多くの友人が駆けつけた

 

「暮らしと小商いの関係性をうまく空間に反映できればと思い、1階の『店舗』と『通り』の関係と同じように、3階の住居の中にも『通り』と『間』を設けて、『間』を生活ゾーン、『通り』を小商いのためのアトリエスペースにしました」(神永さん)

右奥の玄関前がアトリエスペース。キッチンの床を剥がした糊跡が芸術的な痕跡のように見える

 

現在3階のアトリエスペースで2人が製作しているのは、アクリル板を石のように加工したアクセサリー。ほかにも建築家の特性を活かして作った商品で徐々に店の棚を埋め、カフェ営業などもやっていきたいそうだ。

 

 

小商いの実験室に

 

アキナイガーデンでは現在、毎週・隔週・毎月いずれかの頻度で店舗スペースをレンタルする“小商い人”(出店者)と、「どんな新しい小商いができるか、一緒に考えたい」という人が集まってイベントや情報交換を行う「アキナイガーデンクラブ」のメンバーを募集している。具体的に売りたい物ややりたいことが決まっている人だけでなく、「商い暮らし」に関心のある人たちで実験を重ねながら、理想を追い求めていこうという取り組みだ。

「『小商い』が気になっているけど、場所を借りるまではいかない人はたくさんいると思うので、そういう人たちに参加してもらう仕組みがあってもいいのかなと。デザイナーや不動産業の友人と考案したサービスで、彼らにも加わってもらって建築的な目線にとどまらないイベントをやっていきたいと考えています」(神永さん)

 

「都内で商い暮らしができる施設をいくつか視察してきたのですが、そういった場所を皆で回るのも良いですね」(梅村さん)

単なる場所の運営でなく、一つのライフスタイルとしての「商い暮らし」の発信に熱心な2人。物件探しから気になるお店の視察、近隣の人との交流まで、さまざまな記録を活動絵日記としてウェブサイトでも見ることができるので、ぜひ参考にしてほしい。

 

文:齊藤真菜/写真:Alloposidae

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