街の未来を考える、クリエイターたちの拠点紹介
vol.1(ビジョン編)

2021.04.28 泰生ビル 泰生ポーチ トキワビル/シンコービル 弘明寺プロジェクト

泰生ビル屋上にて (2018年撮影)photo:菅原康太

 

私たちは不動産事業をとおして、コミュニティを育むまちづくりを目指しています。関内エリアに4棟、弘明寺エリアに3棟のビルを所有し、入居アーティスト/クリエイターとともにさまざまな活動に取り組んできました。本シリーズでは、各拠点の特徴をお伝えしていきます。

 

 

ビルオーナーとして築き上げた、入居者との顔の見える関係

当社は昭和41年に弘明寺を拠点として創業し、不動産事業をとおしてコミュニティを育むまちづくりに取り組んできた。
現在は東京と横浜に複数のビルを持ち、横浜では関内エリアに4棟、弘明寺エリアに3棟を所有。横浜の各拠点には、多くのアーティスト、クリエイターが入居していることでも知られる。その数は賃貸借契約ベースでは51団体、シェアを含むと87団体にのぼる。

2020年度はコロナ禍のなかで飲食店の撤退や、アトリエとして使用していたアーティストの退去も若干あった。それでもアーティストやクリエイターからは続々と入居の相談が舞い込み、現在、入居率は回復を見せている。
このような時期だからこそ、これまで積み上げてきた同エリアでの幅広いネットワークに支えられていることを実感している。

トキワビル/シンコービルのオープニングパーティ集合写真(2018年撮影)photo:菅原康太

 

人が主役のオーナー業

これまで「入居者との顔の見える関係」を大切にしてきたが、その根底には「人が主役のオーナー業」を展開しようというビジョンがある。
昨今、横浜市庁舎の移転をはじめ、高層マンション、ホテルの建設ラッシュなどにより、関内・馬車道エリアは目覚ましい変化を遂げている。これまであったビルが壊され、新たに建てられたビルが目を引く一方で、私たちがこだわってきたのは古くなったヴィンテージビルを活かして使うことだった。
関内エリアの拠点はいずれも築40年〜60年だが、古いビルの趣を活かし、リノベーションして貸し出している。そしてそこに集う人たちとともに、新たな付加価値を見出すビジネスモデルを確立してきた。

このような手法に至る今から10年以上前は、関内の拠点も賃貸不動産会社に委託をして、入居者を募る一般的な大家業のスタイルをとっていた。だが古い物件はなかなか入居者がつきにくく、2008年のリーマンショック以降は泰生ビルの空室率が30%にのぼることもあった。
このような経緯から、不動産会社任せにするのではなくオーナー自ら動こうと、入居者と賃貸契約を直接結ぶ、現在の手法で運営している。

泰生ポーチオープニングパーティの様子(2015年撮影)photo:株式会社オンデザインパートナーズ

そのビジョンを体現するもののひとつが、2か月に1回程度、定期的に開催してきた「入居者交流会」や各種パーティなどである。交流会には毎回さまざまな人たちが集まり、情報交換ができる場となっている。
現在はコロナ禍で気軽に集まることが難しいのが現状だが、こういった場をきっかけにクリエイター同士のコラボレーションや新たなプロジェクトが生まれているのも物件の特徴だ。

 

アーティストやクリエイターのセルフリノベーションにより、個性的な賃貸物件に

ヴィンテージビルを活かして使い、オーナー自ら入居者と顔の見える関係を築く手法は、多くのアーティストやクリエイターの共感を得ることになった。
借主が自分たちでリノベーションすることを条件として、比較的安価に貸し出すヴィンテージ物件に魅力を感じるアーティスト・クリエイターの需要が高いという手ごたえもあった。

このような活動に至るそもそものきっかけは、公益財団法人横浜市芸術文化振興財団のアーツコミッション・ヨコハマが実施していた、インフラ整備のリノベーション助成だった。泰生ビルのリノベーションのために取得した助成金は、アーティストやクリエイターを誘致することが条件となっていた。
もともとは横浜のアーティストやクリエイターとのネットワークがなかったが、横浜コミュニティデザイン・ラボとの出会いを契機とし、幅広くネットワークを築いていくことになる。

その後、泰生ビルの手法をモデルとして、2014年には泰生ポーチ、2016年にはトキワビル/シンコービルを取得するに至る。

セルフリノベーションされた各部屋は、将来的に入居者が退去した際にも賃貸物件としての付加価値が上がる。クリエイターやアーティストの手による自由なセルフリノベーションは、未来への投資になっていると言えるだろう。

 

シンコービル401号室、トートアーキテクツ LABによるセルフリノベーション(2020年撮影)photo:加藤甫

 

まちの未来を考える――人とまちの共存を目指して

二代目代表取締役の水谷浩士は、「人とまちの共存」を理念に掲げる。
不動産事業をとおして、入居者や地域住民とともにコミュニティを育み、人々の温もりあふれるまちづくりのために活動していきたい――。そんな思いから、私たちはオーナー業の枠を超えて、関内エリアでは泰生ビルの屋上緑化と壁面緑化(TAISEI GARDEN Project、KANNAI NIWA STAND)、保育園(ピクニックナーサリー)の誘致、泰生ポーチの路面店の活性化(泰生ポーチ フロント:パン屋のオヤジ、学童のピクニックスクール)など、まちにかかわるさまざまなプロジェクトに取り組んでいる。

泰生ビルに入居する保育所のピクニックナーサリー

一方、弘明寺エリアでも、水谷ビル2階にはシェアハウスの「水谷基地」が、そして1階には「小商い」のためのシェア店舗「アキナイガーデン」がオープンし、まちに活気をもたらしている。

多拠点型の居住を狙いとしたシェアハウス型住居「水谷基地」(2018年9月撮影)photo:加藤甫

このように概観してみると、古いものを活かして使い、コミュニティを育むまちづくりに取り組んできたオーナー業の歩みがわかる。入居するアーティストやクリエイターとともにビルをつくっていくことで、単なる建物ではない個性がそれぞれのビルに生まれているのが拠点の特徴と言える。これからも新たなつながりが続々と生まれていきそうだ。

※本シリーズでは次回以降、関内と弘明寺の各拠点の特徴に迫ります。お楽しみに!

 

その他泰生ビルについてはこちらから

>