泰生ポーチ
コロナ後初の対面交流会、顔ぶれも新たに
入居者がつくるアットホームな拠点

2022.08.05 泰生ポーチ

2015年にオープンした泰生ポーチは、「Small is better!」というコンセプトの通り、アーティストやクリエイターのタイニーオフィスが集まっているのが特徴だ。2018年からは、1階「泰生ポーチ フロント」の飲食店・学童・イベントスペースとしてのタイムシェア運用も始まり、2階には店舗もオープンするなど、まちに開かれ、愛される拠点として育ちつつある。

そんな泰生ポーチで、真夏のような暑さが少し和らいだ7月5日、対面ではコロナ後初となる入居者の交流会が行われた。入居者もたびたび入れ替わっているため、普段はあいさつ程度だったという人たちが顔をあわせる機会となった。

「泰生ポーチには、入居者のみんなでビルをつくっていくというコンセプトがあります。例えば清掃会社が入っていなかったり、中のサインを自分たちの手で更新していったり。以前は月1回の入居者会議をしていましたが、コロナなどでそれが難しくなってしまった。最近入居した方もいると思うので、今日はまず名前や仕事を知って、自由に交流してください」。泰有社・伊藤康文さんによる挨拶から、会がスタートした。

乾杯! 写真の暗室と展示スペースをそなえたアトリエを構え、酒屋さんも兼業するアーティストの北村和孝さんからは、横浜でつくられたお酒の差し入れも

馬車道に本店を構える「壱」による、気の利いた蕎麦屋さんのツマミ

目にも楽しいおつまみの数々は、今年フロントで「パン屋のオヤジ」とシェア店舗を始めた「肉蕎麦屋 壱」の本店「本格手打ち蕎麦・酒・蕎麦割烹 壱 クラシック」によるもの。また、ポーチの運営を担当するオンデザインのスタッフが茹でてくれたお蕎麦は、店主・吉田期夫さんによる動画レクチャーを参考にしたという。

 

“おとなりさん”のいる仕事場

会は自己紹介からスタート。交流会初参加となったメンバーには、昨年2月にオープンした「はりきゅうマッサージBee」のマキコさん、建築事務所「TDLアーキテクツ」の田野耕平さんなどがいた。マキコさんのお店は泰有社物件のクリエイターも多く利用し、同じフロアに店舗をもつジャム工房「旅するコンフィチュール」の違克美さんは、「いつも階段で声をかけて予約を入れてもらっています」と笑う。田野さんは東京や前橋にもオフィスを持ち、現在は計5拠点を行き来する生活を送っているのだとか。

左から、design office shubiduaの三浦佑介さん、TDLアーキテクツの田野さん、北村さん

向かいの泰生ビルで一級建築士事務所 秋山立花のシェアオフィスcosmosを借りていた「横浜アストレア」星川隆夫さんは、ポーチにも部屋を持って約1年が経った。そのタイミングで、企業のブランディングやデザインを手がける「あげる株式会社」にポーチを紹介し、即入居が決まったという。不用品回収なども専門にする星川さんには、さまざまな職種の入居者から「これも回収してもらえますか?」と、小さなコミュニティならではの質問が相次いだ。

左から、あげる株式会社の帶川智弘さんと大原智子さん、旅するコンフィチュール・違さん

ご祖父の日本画家・加山又造さんの作品管理などに携わる加山由起さんは、泰生ポーチの初期メンバー。「最近は忙しくなかなかポーチに来られないんですが、久々に帰ってくると私の居場所だなと感じます」と語る。また北村さんは、山下ふ頭をポラロイドで残すプロジェクト「SITE BAY YOKOHAMA」などの拠点として、3年ほど前からポーチを利用している。今年3月に亡くなったBankART代表・池田修さんとは同じBゼミスクールで現代美術を学び、「これから池田さんなしで横浜のアートを盛り上げていくために、みんなでがんばっていきたい」と、あまりに早い逝去を悼んだ。

人のつながりからコミュニティが広がり、異なる職種のあいだでも何らかのつながりが生まれる。 “おとなりさん”のいる仕事場という環境が、泰生ポーチをはじめ泰有社の拠点の魅力だ。

フロントで学童事業のほか、地域食堂「さくらホームレストラン」を毎月開催しているピクニックルーム代表・後藤清子さんも遅れて登場

 

人のつながりを媒介する存在として

泰生ポーチは、泰有社と、オンデザインやノガンといった横浜のクリエイターたちのブランディングによって立ち上げられた拠点。入居者との連絡など、コミュニティ全体のサポートを担うのがオンデザインの西大條晶子さんと吉村有史さんだ。

最近サポート業務に仲間入りした吉村さんは、大学の博士課程に通いながらオンデザインに務めている。現在は、TDLアーキテクツ・田野さんや「TSUKI-ZO inc」の月森忍さんら入居者とともに、ポーチのフロアサインを改修する計画を手がけている。「オンデザインでは設計などにも関わっていますが、ポーチではコミュニティの運営を担当することで、建築をつくるだけでなく、どのように使われるかについても学ぶことができています」。ポーチだけでなく、各拠点での連絡・調整を担当する西大條さんも「コミュニティやまちづくりに関わるいまの仕事はとても充実しています」と語る。

入居者と吉村さんたちが改修を進める入口フロアサイン。泰生ビルにある「ファブラボ」のレーザーカッターで加工した木材で統一する予定だ

今年泰有社は、弘明寺で「ニューヤンキーノタムロバ」など新たな拠点を始動させた。「タムロバには、ロサンゼルスで学んでいたダンサーや、大学院を出て俳優を目指している人もいます。“やりたくてしょうがない”人がたくさんいるんです」と伊藤さん。「同じ不動産業界では、コミュニティづくりにあまり興味を持ってもらえないことも多いです。入居者と綿密なコミュニケーションを取ることは面倒くさいと思われてしまう。でも泰有社ではコミュニティがあるからこそ、人が人を呼んでくれるし、それはとても楽しいことです。僕なんか、入居者のみなさんを自慢したいと思ってしまうほど! 好きなことを突き詰めている人は面白いし、刺激をもらえます」。

左から、オンデザイン・吉村さん、泰有社・伊藤さん

入居者同士で「なぜこの仕事を始めたんですか?」という率直な質問や、フリーランスとして活動するうえでの悩みなど、思い思いに会話を弾ませた一夜。初対面も多かったが、会が終わる頃にはそれぞれが打ち解けて笑顔を見せていた。新陳代謝を繰り返しながら、さまざまな人のための居場所として成長する泰生ポーチの今後が楽しみだ。

 

取材・文:白尾芽(voids)
写真:大野隆介

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