stay home, keep thinking アフターコロナのためのメールインタビュー vol.2:李明喜

2020.05.22 泰生ビル


新型コロナウイルスの感染拡大という、数か月前には予想すらできなかった事態。2020年の新年度、誰もがいつもの活動や生活にさまざまな影響を受けました。泰有社のビルに入居するクリエイターたちはいま、なにを考えているのでしょうか。
この時期だからこそ残せる、クリエイターたちの言葉。アフターコロナのためのメールインタビューです。


 

━ふだんの活動について教えてください。
アカデミック・リソース・ガイド株式会社(arg)取締役 CDO
元々は空間のデザインをやってきましたが、argに所属してからは様々なプロジェクトにおける全体のデザインに取り組んでいます。argは公共施設の整備に広く携わっているのですが、従来の公共施設の整備は、建築、運営、システム等の計画がそれぞれ不連続なまま進められてきました。その結果、空間とサービスが乖離し、市民の居場所としても機能していない、名ばかりの公共施設が全国各地でつくられています。こうした制度や仕事の構造によって、至るところに生まれる「不連続=あいだ」をデザインするということに特に力を入れています。

 

━新型コロナウイルスとともに生きていくうえで、ご自身の生活や活動に対する「考え方」に、どのような変化がありましたか?
新型コロナウイルス感染拡大前から「ひとり」という状態を考えはじめていたのですが、こうした事態になってさらに「ひとり」の考察に時間を割くようになりました。

 

━新型コロナウイルスとともに生きていくうえで、工夫していること、心がけていること、大切にしている心構えなどがあれば教えてください。
様々な情報が流れる中で、全ての情報からある程度の距離を取るよう心がけています。中に入ってしまうと見えなくなるのでそれを回避したいということもありますし、「ひとり」の考察の一環としてやっているという側面もあります。

 

━いま、いちばんリラックスできるのは、どんなときですか?
家で家族といる時。なので、今はこれまでになくリラックスできているかもしれません。

 

━アーティスト・クリエイターとして、いま、どのような表現/活動をしたいと思いますか? その理由も教えてください。
2. で「ひとり」をあらためて考えていると書きましたが、その考察をふまえて「ひとり」の環境をデザインしたいと考えています。自分も含めて社会は「集まる」「つながる」といった一つの方向に注力し過ぎてきたのだと思います。集まりたい、つながりたいという人がいるのと同じように、集まることができない人やつながりたくない人もいます。ひとりであることがネガティブな状態ではなく、孤立に陥ることを回避できるような「ひとり」のデザインに取り組みたいです。

他方、長い時間のデザインにもチャレンジしたいです。ロング・ナウ協会が進めている「The 10,000 Year Clock(1万年時計)」というプロジェクトがあります。1万年の時を刻み続ける時計を建設する計画で、コンピュータサイエンティストのダニエル・ヒリスが発明し、「ホール・アース・カタログ」で知られるスチュアート・ブランドが主導しているプロジェクトです。1万年間時計を動かし続けるには、超長期的思考と進歩し続ける技術が不可欠ですが、こうしたスケールのプロジェクトに向き合うことで、人間中心主義のデザインを超えることができるのではないでしょうか。長い時間のデザインについては、まだ具体的なアイデアは見つかっていませんが、日々問い続けています。

このようなミクロとマクロの取り組みを往還しながら、安易な「わかる」を越えた創造を探求していきたいと思います。

The Long Now Foundation – The 10,000 Year Clock
http://longnow.org/clock/background/

 

━コロナ禍が「落ち着いた」と言えるようになったとき、いちばんしたいことはなんですか?
(「落ち着いた」と言えるようになるのかわかりませんが)カフェや喫茶店でコーヒーを飲みながらぼーっとしたいです。

 

━コロナ禍が「落ち着いた」あと、どのような社会になっていてほしいですか? 近い未来に向けて、希望があれば教えてください。
わかりあえないものが共に在る社会。そんな社会においてアートやデザインによる体験的な共感が意味を持つのだと思います。

 

━好きな景色、お気に入りの作品の記録写真、誰かと共有したかった日常の一コマ、なんでも構いません。お写真1点を、写真を説明するキャプションとともにお寄せください。

argで整備に携わった西ノ島町コミュニティ図書館いかあ屋(島根県隠岐郡)の目の前の景色です。日本海の荒々しさと優しさに抱かれ、ゆったりとした日常が流れます。


profile
李明喜(り・みょんひ)
1966年生まれ。1998年にmattを立ち上げ、空間デザインやキュレーション等を行う。2014年よりarg社に加わり、新しい公共施設づくりや地域のデザインにあたっている。図書館計画、ミュージアムキュレーションなどを担当した「須賀川市民交流センターtette」は、2019年グッドデザイン金賞を受賞。

 

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