トキワビル/シンコービル
座談会:「常盤ノブ」が可視化したものとは? クリエイター発の新しい“祭り”(後編)

2019.01.04 トキワビル/シンコービル

昨年9月に開催された「関内外OPEN10!『道路のパークフェス』」では、「常盤ノブ」というイベントが人々の注目を集めました。本イベントをとおして、トキワビル/シンコービルに内包されたポンテンシャルを、入居者同士で考えるのが今回の座談会のテーマ。前編に引き続き、後編をお伝えします。

 

 

ビルの“内側”に向けて

左から原﨑寛明さん(建築家/ハイアーキテクチャー/202号室)、安田博道さん(建築家/環境デザイン・アトリエ/212号室)、浅沼秀治さん(建築家/アトリエモビル/101号室)、私、聞き手の及位友美(編集・執筆/voids/205号室)。

 

及位:今回「常盤ノブ」の仕組みは、ビニール袋のバルーンづくりが簡単で、誰でも参加できたところが良かったと思うんです。アーティスト・クリエイターのなかでも参加した人と、そうではない人の濃淡はありましたが、やろうと思えば誰でも簡単につくることができた。さらにプロフェッショナルのクリエイターが、それぞれのスキルを活かし合ったことで、集団創作のダイナミズムも感じました。一方で、アーティスト・クリエイター以外の入居者と、どのような関係性を築いていくかという課題も見えたのかなと思います。
原﨑:アーティストやクリエイターの存在を、ビルの外側に対して可視化することには一定の手ごたえがありました。次のステップは、ビルの内側に向けて何ができるかを考えることかもしれません。共有部の活用を含め、ビルに住んでいる人たちや、ビルのなかで何ができるかという視点をもてると良いのかなと思いました。
浅沼:屋上でパーティをやるときに、クリエイターだけでなくトキワビル/シンコービルにお住まいの住民の人たちも呼んだらどうだろうという話が毎回出るんですが、実際にはなかなか実現していなくて。風船を窓から出してくださいとお願いするのは大変だけど、例えば窓に何かを貼らせてくださいと協力をお願いすることはできるかもしれない。交流をはじめるきっかけをつくっていけると良いですよね。
高知には、お酒を飲みはじめたら、ドアと窓を開ける文化があるそうです。そういう場所には、入ってきて一緒に飲めるという。このビルがそういう感じになると面白いんですけどね。住民の方には外国籍の方やお年寄りとか、いろんな人がいますから。

打上げの終盤、屋上の一番大きなノブの中に集まって、遅くまで話しました。

 

集合アトリエにおける交流の在り方

 

及位:横浜にはこの15年ほど、北仲BRICK&北仲WHITE、本町ビル45(シゴカイ)、宇徳ビルヨンカイと、集合アトリエの歴史がありますよね。安田さんは黄金町エリアマネジメントセンターが管理するエリアから、原﨑さんは同じく黄金町の旧劇場から、そして浅沼さんは馬車道エリアにあった宇徳ビルから、このトキワビルへと移転してこられました。
浅沼:集合アトリエと言っても、宇徳ビルはオフィスビルとしての建物の構造もあり、なかなか顔が見えにくい面はあったかもしれません。月1回の入居者会議もすこし事務的な雰囲気で。一方、トキワビル/シンコービルはドアに窓がついていたり、建物の構造としてひとつの階が廊下でつながっていたり、人の気配を感じやすい。自治会でもお酒を飲んだり、料理を持ち寄ったりして、人となりがわかる交流に重点が置かれていた気がします。
及位:この座談会の記録撮影にも入っていただいていますが、ライトハウスの中川さんは「常盤ノブ」のはじまりから終わりまでを写真におさめていましたね。浅沼さん同様、宇徳ビルから移転されていますが、これまでトキワビルはいかがでしたか。
中川達彦:トキワビル/シンコービルに移転してからは、やはり宇徳ビルヨンカイ組だった櫻井計画工房の櫻井さんを中心に、オフィシャルな入居者会議ではなく月1回の飲み会で良いから集まろう、そんな雰囲気がありましたよね。北仲WHITE時代から唯一残っている前田篤伸建築都市設計事務所の前田さんもトキワビルに居て、いつも顔を出して機運をつくってくれていました。彼の存在も大きかったです。
及位:voidsも移転前は同じ泰有社の創造拠点・泰生ポーチに入居していたのですが、確かにトキワビルの入居者会議には違うものを感じました。中川さんは「常盤ノブ」の記録だけでなく、入居者たちの部屋の写真を撮影されましたよね。全16室分、スケジュール調整を含め本当に大変だったと思います。いずれもアーティスト・クリエイターの個性を捉えた写真でしたが、撮影してみていかがでしたか?
中川:皆さん見ていただいたとおりで、本当に色んな人が色んな使い方しているんだなということがわかりました。入居者のみんなを知る機会にもなり、撮影できて良かったです。
及位:中川さんとご一緒するかたちで、voidsのグラフィックデザイナー・岡部は入居者紹介ポスターと、「常盤ノブ」ポスターをデザインしました。
岡部正裕:ひとつのビルでこれだけのエネルギーというか、うねりを出せるということは、なかなかすごいことだと思うんですよ。皆さんがすでに大きな道をつくってくれていたので、自分はその波に乗らせていただきました。来年の展開も今から楽しみですね。

 

入居者紹介ポスター/撮影:中川達彦(ライトハウス) デザイン:岡部正裕(voids)

 

 

「常盤ノブ」とは何だったのか

 

及位:最後に振り返りの一言をお願いします!
原﨑:やったことはシンプルなインスタレーションですが、それがみんなの関係性をフラットにしたと思います。こういったプロジェクトを介して入居者同士が分けへだてなく話してコミュニケーションを取れることが、トキワビル/シンコービルにとって大きな財産になったのではないかと感じます。
安田:トキワビル/シンコービルには、クリエイターの方がそろっています。ほかの人が引かないように、できるだけ自分は前に出ず、みんなに声をかけることを心掛けました。これをやってくれ、ではなくて、やりませんかと声をかける。そうすると耳を傾けてもらえます。ひとつのアイデアがあって、それを実現するためにみんなで動けたのは大きかったですね。
浅沼:「常盤ノブ」に関しては共通テーマの“祭り”という軸が、ちょうど良いバランスになりましたよね。作品展示ではなくてお祭りだから、本気だけど本気じゃない。祭りって、本気でやれば楽しいし、本気じゃないとできないけど、遊びもあって。その距離感があるからうまくいった。重要な意味が“祭り”にはあるような気がします。(了)

祭りのあとは屋上で、原﨑さん編集の映像を向かいのビルに投影しながら打ち上げ!

左から安田博道さん(建築家/環境デザイン・アトリエ/212号室)、原﨑寛明さん(建築家/ハイアーキテクチャー/202号室)、浅沼秀治さん(建築家/アトリエモビル/101号室)、

取材・文:及位友美(voids)/写真:中川達彦(ライトハウス)

 

前編の座談会はこちらから。

その他トキワビル/シンコービルについてはこちらから

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