トナリノクリエイター
大谷薫子さん
(泰有通信 vol.5掲載)

2022.06.07 泰有通信 トキワビル/シンコービル

私たちは不動産事業をとおして、コミュニティをはぐくむまちづくりに取り組んできました。半期ごとに、入居アーティスト・クリエイターの活動を紹介するフリーペーパー「泰有通信 vol.5」のコンテンツを、WEBサイトでもご紹介します。トナリノクリエイターは、入居アーティスト・クリエイターが、最近の仕事や考えていることをつづるリレーコラムです。

大谷薫子さん(モ・クシュラ株式会社)

トキワビルに入居しているモ・クシュラの大谷です。モ・クシュラは2012年に設立した出版社です。設立当初は泰生ビルで活動をしていました。起業から今日まで、横浜で活動ができているのは、この2つのビルがあったからこそです。「モ・クシュラ」は「おまえは私の鼓動だ」というゲール語の親愛表現で、読者と深い関わりを持てるような本をつくりたいと思っています。

2021年10月、『風をこぐ』という写真集を刊行しました。著者はベルリン在住の写真家・橋本貴雄さん。この写真集には、橋本さんが2005年に福岡の路上で保護した一匹の犬(フウ)の姿が映し出されています。橋本さんはフウと福岡から大阪、東京、ベルリンに渡り12年間をともにくらしました。ともにくらした日々のなかで、フウを写した写真は1万枚以上あったそうです。

ひとりと一匹が12年間をともに歩いた風景の密度や親密な距離が本に宿るとしたらどれくらい? 本づくりの過程では著者を筆頭にデザイナー、編集者で探りました。正解はありませんが、定価や管理、流通(たとえばクリックポストは1kg、厚さ3センチまで)といった制約のなかで正しいと思う方向を目指します。結果、写真集はA5版ヨコ変形・312頁=厚み2.6ミリ、重さ600グラムになりました。「紙の本」をつくることは、本の内側で語られる世界の実存を、かたちあるものとして生み出すことでもあると思っています。

トップ画像:『風をこぐ』 3,200円+税


PROFILE
大谷薫子(オオタニ・カオルコ)
編集者。大学卒業後、映画の専門出版社、フィルムアート社にて書籍編集を学ぶ。2012年にモ・クシュラ株式会社を設立。http://mochuisle-books.com/

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