「物件ビフォー/アフター」では、入居者によるリノベーションの過程を特集します。第一弾は、元居酒屋だった泰生ビル1階の路面にオープンした、建築設計事務所・株式会社オンデザインパートナーズの新オフィス「オンデザイン イッカイ」です。先日、横浜文化賞を受賞し、その活動にますます注目が集まるオンデザイン。本特集では、そんなオンデザインのスタッフの皆さんによるセルフビルドの様子を、タイムラプス映像とフォトレポートでお届けします!
実験できる“ワークショップ=工房”としての新オフィス
オンデザインは、住宅や施設の設計にとどまらず、建築を軸としたまちづくりなど、社会におけるさまざまな仕組みへのアプローチで知られている。スタッフは総勢50名におよび、学生インターンや若手も多く所属する、横浜でもっとも勢いがある建築設計事務所だ。
2003年に、代表の西田司さんを中心に設立されたオンデザイン。これまで本町ビル45(シゴカイ)、宇徳ビルヨンカイなど、クリエイターが集まる横浜市内の創造拠点にオフィスを構えてきた。そして2017年には、泰生ビルの2階、さくらWORKSが以前運営していたイベントスペースに移転。5年後の2022年、同ビル1階の居酒屋が退去したことをきっかけに、その場所に新たなスペースを増床することになった。
路面に開かれたオンデザイン イッカイのテーマは、「ワークショップ=工房」だ。設計・工事を担当したチーフの澤井紗耶加さんは、「使いながらつくり続ける」オフィスだと話す。「やってみたいことをちょっと試せるような場として設計しました。バーカウンターもあるので、ゲストを呼んでトークイベントをひらいたり、映画などの上映会をしたり。代表の西田は“ノンアルバー”を企画したいと言っています。ハード面でも、1~2年後に要素が加わっていくこともあるかもしれません。アップデートし続けるオフィスになりそうです」。
新オフィスはどんな空間?
「ワークショップ=工房」として使い、アップデートを続けていくというオンデザイン イッカイ。具体的にはどのような機能をもつスペースなのだろうか。
路上に面しているのはガラスの入り口に、開かれたカウンター窓。通りを歩く人たちが、新しいカフェができたのかと勘違いしてしまうような、開放的な設計になっている。
一歩中に入ると、キッチンエリア、バーカウンターがあり、トークなどのイベントが快適に行える空間が広がる。そしてオンラインミーティングができるブースエリアや、パソコン作業や休憩ができるデスク。プロジェクターから映像を壁打ちできる壁面に、客席にもなる階段椅子や、天井の収納スペースがあり、自転車通勤のスタッフが使える自転車置き場まである。
2017年よりオフィスとして使っている2階エリアは、引き続きワークスペースとして活用していくが、1階と2階を内部で行き来できるよう、1階の天井に穴が開けられ、2階の床へとつながるステップも設えた。
DIYの様子をフォトレポートで!
元居酒屋だったスペースをスケルトンにしたり、壁を立てたり、階段椅子を設置したりといったベースの工事は工事業者が担ったが、ベンチや棚など家具の制作、壁の塗装などはオンデザインスタッフが、総出のDIYによってつくりあげた。ここからは8月24日に行われたセルフビルドの様子をフォトレポート。
2022年10月1日(土)、2日(日)に開催された関内外オープンでは、新オフィスのお披露目も行われ、多くのお客さんでにぎわった。今後さまざまなイベントも企画されるオンデザイン イッカイの動向に、ますます目が離せなくなりそうだ。
PROFILE
株式会社オンデザインパートナーズ
横浜の建築設計事務所。 オープンでフラットな対話型手法による建築設計から、まちづくり・拠点運営など幅広い活動を行う。主な仕事に、「ヨコハマアパートメント」、「神奈川大学新国際学生寮(まちのような国際学生寮)」、横浜スタジアム「コミュニティボールパーク」化構想、みなと大通り及び横浜文化体育館周辺道路の再整備に向けた社会実験など。
撮影・編集(映像・写真):大野隆介
取材・文:及位友美(voids)
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