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信用金庫と商店街、クリエイターが交わる一夜

横浜信用金庫弘明寺支店交流会「弘信会」レポート

横浜信用金庫弘明寺支店の職員と会員が親睦を深める「弘信会」。2026年7月3日、支店で開かれてきたこの会が、初めてGM2ビルの屋上で開催された。
当日は、泰有社物件に入居する現代美術家やクリエイターも参加。弘明寺かんのん通り商店街の各店が提供した料理やドリンクを囲んで、言葉を交わした。
泰有社のオーナーで弘信会会長を務める水谷浩士は会の冒頭で、「新たなる出会いが生まれて、弘明寺が熱くなってくれれば」と期待を託した。会の一部をレポートする。

GM2ビルの屋上でひらかれた弘信会

横浜信用金庫弘明寺支店が主催する「弘信会」は、同支店の職員と会員が集まる交流会だ。泰有社のオーナー・水谷浩士の誘いを受け、入居する現代美術家やクリエイターらも参加。長年続いてきた地域のつながりに、新しい顔ぶれが加わるカジュアルな交流の場となった。水谷は会の趣旨を語る。
 
「横浜信用金庫さんの経営理念は“このまちの未来をともにつくる”で、それに沿った経営をされています。弘信会は僕が会長をやっていて、普段の参加者は会員さんばかりなのですが、入居者10人ほどにお声掛けして、まちの方と交流を図ってもらうことにしました。商店街との付き合いも深まってきたので、さらにその輪と縁を広げる。横浜信用金庫さんもクリエイティブな人たちと触れることは多くはないでしょう。その点もいいのかなと感じています」
 
例年は弘明寺支店の会議室で行われていたこの会だが、この日は初めてGM2ビルの屋上が会場となった。きっかけは、GM2ビルの屋上を提供して行われている、横浜市立大岡小学校と連携した養蜂活動を、信金の理事長が見学したことだったという。
 
開催前から雨が心配されたものの、この時は好天に恵まれた。7月3日の午後5時20分。気温約25℃の過ごしやすい夕方、水谷が開会のあいさつに立った。

あいさつに立つ泰有社の水谷。「お天気の神様、ありがとうございます!」と好天を喜んだ

「弘明寺を皆さんで盛り上げて、これからどんどんどんどん楽しく発展できたらと思っております。ここでまた、交流を深めて新たなる出会いが生まれて弘明寺が熱くなってくれればと思います」

乾杯の瞬間。会場の長机は信金の職員が朝から運び込んだ

GM2ビルの屋上で、弘明寺商店街の料理を囲んで

会場では「弘明寺かんのん通り商店街」の飲食店からドリンクや料理が提供された。横浜弘明寺商店街協同組合の理事長が営む「あしな」の惣菜盛り合わせや、焼き鳥店「鳥忠」の鶏ハム、「いなせ寿司」や「関寿し」の握り寿司、そして、水谷ビル1階にある「PEACH COFFEE」もコーヒーを提供した。参加者はビュッフェ形式で自由に好きなものを手に取っていく。

写真右端が現代美術家の小泉明郎さんで、その左隣が渡辺篤さん
写真左のピッチャー2本がPEACH COFFEEのコーヒー。ブロックアイスも用意され、キンキンに冷えたアイスコーヒーを飲むことができた。隣には洋食店「レストラン マコト」の揚げ物があった
横浜弘明寺商店街協同組合の理事長が代表を務める弁当・惣菜店「あしな」のオードブル。もちろんこの会には理事長も参加していた

食事を囲んでの歓談が進むなかで弘信会に長く参加してきた会員からは、いつもとの違いを感じたという声が聞かれた。
 
「昔、うちの会社の代表が横浜信用金庫弘明寺支店のすぐ近くで起業して横信との取引が30年以上あります。弘信会には毎回出席していて年配の方が多いのですが、今日は本当に若い方が多いです。弘明寺支店がどういう方向性に行こうとしているか、はっきりわかる感じがします」
 
一方、初めての参加となったのが、GM2ビルに今年4月にアトリエを構えた彫刻家・評論家の小田原のどかさんだ。
 
「ビルの入居者関係の方とお話しすることはあるんですけれど、こんなにいろんな方と話すのは初めてなのでありがたい機会ですね。おいしいお店の情報も教えていただきました。お話しすると、『アーティストが多いんですよね』と言ってくださる方が多いので、なんだかうれしいですね」

写真中央、生成り色のワンピースを着ているのが小田原さん

小説の執筆活動を続ける橋本彩香さんも、初めて弘信会に参加した一人だ。商店街で空き店舗となった場所をコミュニティスペース「マチノテコ」として開き、いまは商店街で月に1度開かれるマルシェイベント「橋の上の、弘明寺市場」の運営・広報にも関わっている。
 
「ほとんどが初対面の人ばかりですが、優しく気さくに話してくださいました。マルシェに出店してくださっている方で弘明寺にお店を出したいという方がいるので、不動産に詳しい方を紹介してもらい、お話ができました。本当にマルシェの出店者さんがお店を構えてくれたらいいですよね。こういう場じゃないとなかなかお話しする機会がないので、参加させていただいてありがたかったです」
 
食事を囲んだ会話は、親睦を深めるだけにとどまらなかった。こうした具体的な接点が生まれることも、この会の大きな意味かもしれない。

橋本さんが執筆した小説を行員に紹介する場面もあった

若い考えを取り入れながら

この場には、水谷の母・水谷美子さんの姿もあった。結婚を機に弘明寺に移り住んで60年以上が経つ美子さんは、まちが変わるのを感じている。
 
「昔はお着物を商店街の呉服屋さんで必ず買っていたんですよ。最近は足を運ぶことも少なくなり、店主さんの代替わりもありましたが、通りかかれば、『奥さん、入ってくださいよ』などと声をかけてくれます。なるべくなら、地元で物を買ってあげるのが一番いいですよね」
 
「入居している人は大事にしなきゃいけないって、息子にも言っています。若い考え方を取り入れるのがいいですよ。PEACH COFFEEさんのソフトクリームもすごく売れていると聞くし、橋の上でマルシェのイベントもやっているそうで。あれは私も良いと思いますね」

左から2番目が美子さん。息子である水谷浩士に誘われて、初めて参加したという

過去の弘信会に参加したことがあり、空き店舗活用や「商い暮らし」をテーマにしたレクチャーを行った建築設計事務所「AKINAI GARDEN STUDIO」の梅村陽一郎さんは、まちと信用金庫の関係にも新しい可能性を見ている。
 
「“アーティストなど多種多様な人がいるまち”といっても、泰有社と関わりのある人たちはアーティストの存在を知っている一方で、実際にまちに住んでいる人たちはまだ知らないかもしれない。そのギャップが埋まっていくと、もっとおもしろくなるんじゃないか。京都にある信用金庫では、支店の1階をカフェのようにして、まちに開いている事例があります。そんなあり方もありえるかもしれません」

梅村さん。PEACH COFFEEの開店にあたって店舗設計やマルシェイベントの屋台設計を担うなど、商店街と泰有社、クリエイターをつなぐ存在だ

信用金庫、商店街、そしてクリエイターたちが屋上で言葉を交わしたこの日、「新たなる出会い」が生まれはじめていた。

取材・文:中尾江利(voids)
写真:大野隆介

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