MAGAZINE

トキワビル
入居者ファイル #56
安達雅朗さん(株式会社インディゲンス)

株式会社インディゲンスは2020年創業。モノやサービスを売るための戦略を考え、ブランディングに伴走するWEBマーケティング会社だ。CEOである安達雅朗(あだち・まさお)さんが創業の経緯と自社のフィロソフィー、DIYしたオフィスについて話してくれた。

「感動」できるかどうかがフィロソフィー

画面トップの写真で顔を見合わせながら笑う二人がいる。左が株式会社インディゲンスCEOの安達雅朗さんで、隣が創業の仲間である石川知史(いしかわ・さとし)さんだ。安達さんはEC通販サイトのWEBマーケターを経て、2019年に独立。2020年に株式会社インディゲンスを創業した。独立の理由は以前の仕事に疑問を抱いたからだった。

インタビュー中の安達さん

「EC通販系の業務は、お客さまに買っていただくことだけをずっと追いつづける仕事になりがちでした。また、大きな組織だったので『自分は歯車でしかない』という感覚もあったんです。それでは飽き飽きしてきますし、もっと上を見て、いろんな業界を見たかったんです」
 
「つらいことも多かった」と当時を振り返る安達さんだが、それだけではなかった。同社内の石川さんと出会い、大のアニメ好きという共通項で意気投合。安達さんは「仲間と出会えたことが一番の資産」だと言う。
 
2019年9月、石川さんと安達さんはほぼ同時期に退職。横浜市内の住居で同居を始め、「仲間で何かやりたい」と会社を立ち上げた。当初は、アニメーターの労働環境や今期話題のアニメをまとめるウェブメディアを運営したり、声優やアニメ監督らを招いたトークイベントを開催したりしたこともあった。現在では、クライアントのオウンドメディアの企画制作や運営、SNS上に上がるクチコミの収集・分析、広告代理業に携わる。
 
石川さん曰く、「僕たちの仕事を一言でいえばモノやサービスを売るための戦略を考えること」。たとえば、日本人ファッションデザイナーの老舗モードブランドの公式通販の売り上げを今の3倍にして、さらに20代に買ってほしいという要望があったとする。その時、ブランド価値を崩すことなく20代に人気のTikTokを活用できるか? セカンドラインをつくるべきか? ウェブメディアを立ち上げるか? そんなふうに一日中アイデアを考えつづけるのだと話す。
 

石川さん。取材中も安達さんと冗談と笑いが絶えない仲だ

インディゲンスのフィロソフィーは「感動のファンファーレを」。クライアントのブランド価値向上を目指し、自分たちも、クライアントも、クライアントのお客さまも「感動」する体験をつくる──。安達さんは仕事でもっとも大事にしていることをこう話した。
 
「ブランドの価値づくりのために、戦略づくりから実行まで、やれることはなんでも伴走します。大事なことは『誰かが感動するかどうか』。ただ、売り上げが上がればいいのではなく、『お客さまや僕たち、誰かが感動できたのか?』で仕事を振り返っています。すべての軸は『感動』の一言です」

DIY可能が入居の決め手。“脳みそがひらく”オフィス

創業以降、新型コロナウイルス感染症の流行があり、リモートワーク中心で働いた。しかし「みんなで集まって仕事できる場所がほしい」と思うようになり、市内で物件を探した。
 
安達さんが泰有社を知ったきっかけは、2024年5月にテレビ東京で放映された「出没!アド街ック天国」の「横浜 関内」特集だった。そこで、横浜市のクリエイター誘致の取り組みや、クリエイターが関内に増えていることを知り、関内でいくつかの物件を見学した。泰有社以外の物件や泰生ポーチ、トキワビルを内見し、トキワビルにたどり着く。入居者の多様さ、そして何より「自由にDIYをしてもいい」と言われたことが入居の決め手になった。
 
「『自分たちで、この場所を好きに改装していいよ』と言われたのが、入居理由として大きいですね。泰有社の伊藤康文さんの人柄にも魅了され、いろんなクリエイターさんがいる場所であれば、僕たちもシナジーを感じながら仕事ができるかなと思いました」

仕事中の風景。デスクの天板はニスを塗って防水加工もバッチリ

モニターやパソコンを置いた4人用のデスク、テレビ台や棚などはすべて安達さんと石川さんの手製。1Kの室内に柱と壁を立てて空間を区切り、宣材写真やSNS用の動画撮影スペースも準備した。リモートワーク中心で働きながら、毎週水曜は必ずここに集まると決めている。
 
「集まれば雑談が生まれますし、それによって“脳みそがひらく”ような感覚があるんです。リモートワークだと目の前のことを見つめるだけになりがちで、アイデア出しもコミュニケーションもしづらくなる。頭をアップデートしながら、みんなで仲良くやりたいと思っているんですよ」

この棚も手づくり。下段にふたりが好きなアニメのグッズ、中段に石川さんが好きだというファッションデザイナーが特集された雑誌、上段に会社ロゴの参考にしたというレコードジャケットが置かれている

トキワビルに集まるクリエイターの活動を広めたい

入居者が隔月に1回、集まって話をする「住民会」が開かれているトキワビル。「ぜひ参加して、入居者の方々とコミュニケーションしたい」と安達さんは話す。まだ構想段階だが、自分たちのこと、そしてこのビル内の活動を広めるようなことができたら、と考えているそうだ。
 
フィロソフィーである「感動のファンファーレを奏でる」を目指し、人とのつながりづくりや仲間とのプロジェクトをどんどん進めたいと語る安達さん。新しいことにチャレンジしていきたいと話す言葉からは意気込みがにじむ。
 
このオフィスから、次はどんなチャレンジがひらかれるのだろうか。

PROFILE

安達雅朗[あだち・まさお]
株式会社インディゲンスCEO。2020年2月に「株式会社インディゲンス」を創業。WEBコンサルティング事業、インターネット全般の広告代理事業、WEBサイトの制作および企画立案を担う。「感動のファンファーレを~Let’s move people’s hearts.~」という企業理念のもと、社会に貢献し、たくさんの方々の心に深く響く感動を提供することを使命としている。

取材・文:中尾江利(voids)
写真:森本聡(カラーコーディネーション)

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