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さくら通りOPEN! Vol.11
「泰生ポーチ・フロント ファニチャーアイディアコンペ公開審査会」レポート

関内の路上を活用することで、市民が自由に活動できる場を創造し、地域コミュニケーションの育成と関内の発展を目指すイベント「さくら通りOPEN!」。
 
11回目の今回は、「桜通りをたのしくする会」とのコラボ。関内桜通り(以下、桜通り)沿いにある「泰生ポーチ・フロント」のアップデートの検討に向けた、ファニチャーアイディアコンペ公開審査会が開催された。先行で第一次審査が全国規模で行われ、公開審査会での二次審査発表者は4組。路上でくりひろげられた「仲間づくり」に向けたコンペの様子を紹介する。

「泰生ポーチ・フロント」のリニューアル構想

2008年にさまざまな人たちが集まりクリエイティブなプロジェクトが生まれる場所としてオープンしたシェアスペース「泰生ポーチ・フロント」。イベントがたびたび行われていたが、コロナ禍に一度コミュニティが縮小。
 
一方で桜通りでは、車道の一部を通行止めにしてオープンテラスを道路につくっていく実証実験「かんないテラス」がはじまるなど、新たなにぎわいも生まれていた。

審査会当日の桜通りの様子

泰生ポーチの運営を担う事業者のひとつ「株式会社ピクニックルーム」の代表取締役で、本イベントの主催「関内桜通り振興会」の事務局を務める後藤清子さんはこう話す。
 
「横浜の創造都市政策で恩恵を受けてきた私たちが、地域と関わりながら新しい価値を提供したいと考えたときに、日常的な活動力が弱まっていた泰生ポーチ・フロントをなんとかしたいという議論が2025年の春先に出てきました。
 
もともと『地域で育っていく子どもに寄り添った、ライブラリーの力で何かできる場所をつくりたい』ということを、アカデミック・リソース・ガイドの岡本真さんと議論していた経緯もありました。私と岡本さん、泰有社の伊藤康文さんが中心になり、泰生ポーチ・フロントのリニューアルを考えはじめました」
 
そこで、「としょかん」と「こうみんかん」の機能をもったコミュニティスペースへの再整備を構想。関内が建築事務所の多い地域であることを生かし、「まずは仲間を増やしたい」という思いから開催されたのが、ファニチャーとその活用アイデアを募る本コンペだ。
 
まずは内装などのハード面の整備費をまかなうために、「ヨコハマ市民まち普請事業」にも応募した。これは、市民による地域コミュニティの活性化などを実現するための施設整備に対して、横浜市が支援・助成を行う事業だ。二次審査は通過とならず不採用になってしまったが、応募にあたっては多くの人がリニューアルへの思いを胸に企画に携わった。

一次選考通過の4組が、アイデアをプレゼン!

コンペの応募者は4名。香川県から訪れた人もいた。建築を学ぶ学生から、設計事務所を主宰するほどのキャリアをもつ建築家まで集まった。屋外ということもあり、真剣な姿勢はありながらも、和やかな雰囲気が桜通りに広がった。

公開審査会の様子

「ワークショップなどで学生に来てほしい」「まちの廃材を使う」「まちや、通り全体が面白くなっていくように」「関内らしさを棚に詰めこむ」「桜を一年中感じられるように」などさまざまなアイデアが出た。

コンペ作品『誰もが自然と参加するポーチ』
質疑応答が盛り上がった
コンペ作品『旅する家具たち』

会場では、応募者同士や「桜通りをたのしくする会」メンバーがそれぞれの案に対して講評を行った。会場の参加者とのやりとりもあり、議論が深まる場面も。

コンペ作品『花咲く、笑顔咲く、開花の場』発表の様子
コンペ作品『「せかいかん」とシナプス ―まちの活動をつなぐ新たな共創拠点―』

プレゼンテーションや質疑応答を終え、「桜通りをたのしくする会」メンバーによる公開投票で最優秀賞に選ばれたのは『「せかいかん」とシナプス ―まちの活動をつなぐ新たな共創拠点―』。
 
丸太を使用し、台形に近い不規則な形の棚を積み重ねてできあがる棚を、既存利用者、近隣クリエイター、企業や周辺住民など、みんなの世界観を発信する空間として活用するアイデアだ。

コンペに選ばれたお二人

棚の形状のわかりやすさや、周辺の人びととの関わり、桜通りでのイベント時は外に持ち出せるなどの点が評価された。同時に、講評では「決めがたかった。応募者それぞれの良いところを組み合わせたい」といった声もあった。

市民に開かれた、民設のコミュニティスペース

「優劣をつけるというよりは、メンバーシップを高めること、若手の頑張っている人たちにアイデアを出してもらうことを大切にしたコンペです」
 
そう話す後藤さん。新しいコンペのかたちは「私たちにとっても挑戦だった」と言う。

最後に、今後について伺った。
 
「主体的に関わり、この場所を面白がって一緒に使ってくれる仲間がほしいです。
 
普段は会えないような人たちと交流できるようなコミュニティをつくりたい。その要素のなかで大事なのが図書だと思います。
 
『何もしなくてもいい』という時間を担保される場所がなくなってきているので、敷居が高くない開き方にはこだわっていきたい。ただ、ここは完全公設ではないので、誰もが来られるけど、その『誰もが』のペルソナはしっかり設定していきたいです。
 
マルシェや飲食などのイベント開催を交えた、近くに住んでいる人がふらっと立ち寄れるようなブランディングでありながらも、そのなかに巧妙に福祉が埋め込まれているような空間をつくりたい。ふとした相談もできますが、普段は無表情で通えるような場所が、立ち入りやすさや、本来の子育てのしやすさにつながるのではないかと思います」

公開審査会の会場では、木製遊具があるスペースで子どもたちが遊び、その様子をときおり見つめる光景も。
 
桜通りをはじめ、まちのこれからを「たのしくする」拠点としての「泰生ポーチ・フロント」。これからどのような風景やつながりが生まれていくのか、想像をかき立てられる一日だった。
 
 
取材・文・写真/小林璃代子(voids)