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泰生ポーチ
入居者ファイル#03
久保隆文さん(株式会社Mantle)

「泰有社」物件に魅せられた人々を紹介する入居者インタビューシリーズ。
今回は泰生ポーチを拠点に活躍する、株式会社Mantleの久保隆文さんにご登場いただきます。

ゆるくつながっている感覚が魅力です。

泰生ポーチの204号室に入居して約1年半、株式会社Mantleの久保隆文さん。

PROFILE
久保 隆文/照明デザイナー /日本国際照明デザイナーズ協会(IALD Japan)アソシエート会員
1976年生まれ。〜2001年、武蔵工業大学大学院修了(現在:東京都市大学大学院)。2001-2005年、大成建設(株)在籍。2006-2014年、Lighting Planners Associates在籍。2014年10月、照明デザイン事務所マントルデザインを始める。2018年9月~、株式会社Mantle 設立。

「泰生ポーチ」の特徴として挙げられるのは、入居者本位の運営だ。一般的にマンションなどには必ず入っている管理会社がここには入っていない。そのため過半数の出席を基本とした月1回の運営会議を設けて、ビルの共有部の清掃や使用ルールなど管理・運営に関する必要なことを話し合っている。
具体的には、トイレの掃除が各部屋でもちまわりだったり、共有部のゴミ箱のゴミ捨て、備品の購入などは気付いた人が率先して対応することになっていたりする。このように入居者自身が協力し合って、ビルの管理を担っているのだ。それぞれ違うペースで「泰生ポーチ」を使用している入居者たちにとって、このようなビルの管理面のコンセンサスを取ることは簡単ではない。入居者たちの実感もそれぞれに異なるが、会議で顔を合わせることで、ゆるくつながりを感じられると語ってくれたのは、入居して約1年半、照明プランニングを手がける株式会社Mantleの久保隆文さんだ。
 

「都会だと、マンションの隣に住んでいる人の顔も知らないということも珍しくありません。でも泰生ポーチの場合は入居者会議があることで、今この人はこういう活動をしているのか、とそれぞれの情報を共有することができます。ゆるくつながっている感覚をもてるところに魅力を感じますね。自分の専門分野以外のフィールドで活動している方が多いので、視野が広がる面もあって刺激をもらっています。
以前、『関内外OPEN』でスタジオを開けていたときには、いろいろな人が仕事場を訪れてくれました。その数日後に、うちの事務所で働きたいというメールをいただいたこともあって。もしかしたら入居者たちの仕事に興味をもっている人が、関内外OPENなどの機会にクリエイターの仕事場をまとまって見ることができるのも、集合オフィスの魅力かもしれませんね」

照明プランニングを手がける株式会社Mantle の部屋。本業の技術が発揮されたオフィスはショールームのような趣に。(撮影:加藤甫)

入居者会議から生まれたアイデアを泰有社が実現したプロジェクトもあった。そのひとつが稲山貴則建築事務所とアトリエトート、ボイズによる共有部の照明+サイン計画だ。2016年の関内外オープンを前に、創造拠点としてのブランディングを高め、開かれたイメージを発信するための取り組みだった。このときは共有部の照明プランに加え、各部屋やトイレ、踊り場などのサインのデザインや、各階のイメージカラーの設定と、それに対応した塗装計画を立ち上げた。入居者が自らの専門性やクリエイティビティを活かし、協働して「泰生ポーチ」のイメージを刷新したことで、メディアに取り上げられるなどの反響を呼んだプロジェクトになった。

泰生ポーチの各階の踊り場にはイメージカラーが設定されている。入居者自らが手がけた照明とサイン計画。(撮影:加藤甫)

「入居者同士のネットワークについて言えば、具体的な活動にはつながっていなくても、ふだん同じビルで何気なく顔を合わせていることで、『こういう仕事のときにはあの人に相談できそうだな』と頭の片隅に思い浮かべることができて、身近な存在でいられます」」(久保さん)
「泰生ポーチ」という場は、そこにいる「人」がつくっているということだ。入居者の久保さんが指摘したとおり、一つひとつの部屋は閉じられた空間だが、集まればゆるやかな集合体になる。管理や運営などの課題もある一方、これからの関内エリアにおけるポテンシャルは大きい「泰生ポーチ」。
入居者はもちろん、さまざまな横浜のプレイヤーが出入りする場としても、変化を遂げていくのではないだろうか。今後も入居者へのインタビューを中心に「泰生ポーチ」の近況をアップしていく予定です。

取材・文・写真:及位友美(voids)

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