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泰生ビル 入居者ファイル#04 秋山怜史さん(建築事務所 秋山立花)

「泰有社」物件に魅せられた人々を紹介する入居者インタビューシリーズ。
今回は泰生ビルでシェアオフィス「cosmos」を運営する、建築家の秋山怜史さんにご登場いただきます。

寛容と余白ある「場」が引き出す、入居者の創造力と化学反応

シェアオフィス「さくらWORKS<関内>」開設後ほどなく見学に来たのが、建築設計事務所「秋山立花」代表の秋山怜史さんだ。横浜市戸塚区生まれ・戸塚区育ちの秋山さんは、2008年に独立後、事務所を探していた。秋山さんは「注文を請けて建てるスタイルの建築家」では、社会価値の創造に寄与するという面でも、ビジネスモデルとしても物足りなさを感じていた。

施主の仕事・業界を理解し、そこで暮らし、働く人たちの動きや幸せを理解しなければ、新たな可能性・選択肢となる「良い建物」は建てられない。
「さまざまな人たちと対話し、環境や制度を把握して建物という形に結実させる『建築家の職能』は、本来もっと豊かなはず」と信じる秋山さんは、その職能を生かしながら「地域のなかでその建物が存在する意味、その建物が地域に与える影響」に関心があった。秋山さんの代表的なプロジェクトであるシングルマザーのための「ペアレンティングホーム」にもその思いは反映されている。
 

発想を広げてプロジェクトを創造し、そのインパクトを大きくするためにも、単に個人事務所の部屋を確保するというより「ジャンルを超えて、刺激しあえる人たちと一緒に働きたい」と考え、ゆくゆくはシェアオフィスを運営したいという思いがあった。そんなタイミングで出会った泰生ビル。すぐに泰有社・伊藤康文さんに会い、部屋を内見したそうだ。
 

選んだ部屋は3階の2部屋。初見の際には残置物がたくさんあり暗かったが「続きで借りられ、一部の壁を抜いてもOKという泰有社さんのオープンな感じがとてもよかった」ことから秋山さんは拠点開設を決めた。改装には芸術文化振興財団のクリエイター助成も活用し、2013年1月に「共に成長する」をコンセプトとするシェアオフィス「cosmos」がオープンした。

シェアオフィス「cosmos」の室内は、壁の漆喰塗りや家具などをDIYによって改装した

カメラマン・行政書士・政策コンサルタントが拠点を置くが「最近はそれぞれが忙しく、顔を会わせられないことはちょっと寂しい。でも、それはみんなが成長し、活躍しているということ」と秋山さんは話す。
 

埼玉県で働く新聞記者の妻の仕事と子育てに配慮し、現在、横浜市内に住んでいない秋山さんだが、外から見える横浜そして関内に感じることもある。横浜市役所移転を2019年に控え、関内のビルは一挙に空き床が増える。
「どんなエリアとして誰に愛されたいのか。そんな原点を、このビルの人たちも含め、エリア外の人たちともじっくり話してみたい」。秋山さんのそんな言葉には、宮城県・塩竈市の復興プロジェクトをはじめ、各地でまちづくりにも関わる建築家の「職能」が垣間見える。

PROFILE
秋山 怜史(アキヤマ・サトシ)/建築家。昭和56年生まれ。神奈川県立横浜平沼高等学校97期生野球部主将。東京都立大学工学部建築学科卒業。平成20年、一級建築士事務所秋山立花設立。平成26年〜30年、横浜国立大学非常勤講師。平成27年〜28年、神奈川県地方創生推進会議委員。

文・写真:宮島真希子

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