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泰生ポーチ
入居者ファイル#21
マキコさん(はりきゅうマッサージBee)

「泰有社」物件に魅せられた人々を紹介する「入居者ファイル」シリーズ。今回は、今年2月、泰生ポーチに鍼灸マッサージサロン「はりきゅうマッサージBee」をオープンしたマキコさんにご登場いただきます。

意外と知らない鍼灸治療

今年2月、泰生ポーチ2階の一室に鍼灸マッサージサロン「はりきゅうマッサージBee」がオープンした。黄色い壁が印象的な空間に、ベッドは一台のみ。ここでマンツーマンの施術を行っているのが、マキコさんだ。
 

マッサージや整体の経験はあっても、鍼灸治療を受けたことがないという人は多いのではないだろうか。はりきゅうマッサージBeeでは、各部位のマッサージに加え、「顔鍼/美容鍼」、そして全身の鍼・灸・マッサージすべて込みの「鍼灸コース」などのメニューを揃えている。

こぢんまりとした空間だが、明るい黄色で開放的な印象

「はじめはマッサージから入り、次に鍼に興味をもたれる方が多いですね。血流を良くする効果があるので、アプローチの違いだけで、やっていることはマッサージとそれほど変わりません」とマキコさん。好き嫌いや、その人の体に合う・合わないがあるため、一度試してみて合わないと感じたら、無理に続ける必要はないという。
 

「刺したり、火を付けて燃やしたりと聞くと、すごく野蛮な感じですよね(笑)。でもいまはInstagramなどSNSのおかげで、かなり受け入れられやすくなっています」。顔鍼/美容鍼は、美容はもちろん頭痛や眼精疲労にも効果があるため、男性のリピーターも多い。

アスリートの世界に触れた経験から

鍼灸あん摩マッサージ指圧師を志したきっかけは、小さい頃、家族の肩を揉んで喜んでもらった経験にあるかもしれないと言うマキコさん。もともとは販売業で接客の仕事を楽しんでいたが、もっと専門性のあること、そして何より一度きりの人生だから面白いことをしようとその道を選んだ。
 

その後、さまざまな治療院などに勤め、いずれは独立しようと考えていた。そこにコロナ禍やさまざまなタイミングが重なり、泰有社の物件にたどり着いた。「壁はもとから黄色で、一目見て気に入りました。4階も空いていましたが、お客さまがいらっしゃるのでなるべく低い階がいいと思い、ここに即決したんです。お客さまは、関内にこんなおしゃれなビルがあったんですね! と言ってくれます」。

待合室と施術室を分ける壁を新たに設置した

マキコさんは、海外でも施術の経験がある。一度は海外で暮らしてみたいという思いがあり渡英。英語を学びながら、現地で日本人が経営する治療院でアルバイトをした。
 

滞在中にダンサーやサッカー選手の施術をしたほか、帰国後はバレエスクールのボディケア部門に携わるなど、アスリートを担当する機会も多かったマキコさん。「バレエは華麗な世界に見えますが、みんな泣きながら、身も心も削ってやっているのを目の当たりにして、その裏にはドラマがあるんだとわかりました」。過酷な世界のなかで、パフォーマンスに直接つながる体のケアは重要な仕事だ。

鍼につけるパルス電極。微弱な電気によって、体の内側から筋肉がほぐれる

とくにアスリートは、脳から筋肉へ、筋肉から脳へというレスポンスがとても早く、刺激を入れるとすぐに反応があるという。効果が出やすいとも言えるが、少しの刺激でも反応が大きくマイナスに働く場合もあるため、慎重に施術しなければならない。
 

「病院であれば、レントゲンやMRIで状態を見て、必要があれば手術するという流れになります。でもアスリートは、すぐにステージや試合に対応するため、もっと直接的なアプローチを求める場合も多くあります。例えば上がりづらい脚を上がりやすいようにしたり、炎症を抑えて動けるようにしたりということは、湿布や薬でカバーしきれない部分もあります。また、目に見えるかたちで治療を受けることの精神的な効果も大きいはずです」

継続的に通える身近な場所へ

国内外でさまざまな経験を積んだマキコさんだが、そのゴールはとにかく「気持ちいい」ことにあると言う。そのために技術はもちろん、リラックスできる環境づくりも重視している。「プライベートサロンという形式を敬遠される方もいるかもしれません。でも、人の気配で緊張してしまうという方は多いですよね。そういう方に少しでも体の悩みなどを話していただくためにも、完全にマンツーマンでやりたいと思いました」。
 

逆に、話したくなければ話さなくてもいい。マキコさんは「自分もマッサージを受けるのが好きなのでよく行きますが、逆に気を使って喋ってしまうことがあります」と笑う。「必要なことはお聞きしますが、寝てもいいし、無理に話したり、黙っていたら悪いかなと思ったりする必要はまったくありません。とにかくリラックスできる、自由な場所にしたいんです」。

加えて注目したいのは、その価格だ。通常のマッサージ店ならば10分1000円程度が相場のところ、はりきゅうマッサージBeeでは、全身マッサージは60分4500円、「鍼灸コース」は60分5000円(取材当時の価格)という安価で提供している。そこには、定期的に通ってほしいというマキコさんの思いがある。
 

「人間の体は形状記憶するので、硬い期間が長いとそれを普通だと思ってしまいます。例えば月1回マッサージを受けただけでは、そのとき楽になっても、すぐもとに戻ってしまうんです」。重要なのは、継続してケアしつづけること。体がほぐれる状態を定期的につくることで、それだけ緩んだ状態に慣れるのも早くなる。

一番よいのは月2回のケアだが、1回1万円だとすれば月2万円。定期的に通いやすいとは言えない額だ。「そこを1回数千円からであれば、少し現実的ですよね。美容・健康は、経済状況が悪くなればはじめに切り捨てられてしまう部分かもしれません。でも、仕事や生活でつい人のことを優先しがちななか、自分のことをケアする時間がないとやっていけないはず。自分のことに時間をかけてほしいし、かけられる状況をつくりたいと思ったんです」。
 

泰生ポーチの小さな一室には、いま本当に必要なケアを提供したいというマキコさんの思いが詰まっていた。長引くコロナ禍や環境の変化で、心身ともに不調を感じることも多い昨今。疲れを感じたときは、ぜひ気軽に足を運んでみてほしい。

PROFILE
マキコ
神奈川県横浜市出身。幼少期に家族の肩を揉み褒められたのがこの道に進んだきっかけ。販売接客業などを経て、東京の鍼灸あんまマッサージ指圧専門学校に入学。国家資格取得後渡英、現地で約3年半ほど治療活動を行ったり欧州をフラフラしたり、帰国後国内有名バレエスクールのボディケア部門で働いたり、地元の揉みほぐし専門店で世間の荒波にもまれたりした後、関内にご縁があり居つくことを決意。出店に至る。初めて鍼を受けられる方をたくさん担当させていただいてきました。指圧マッサージも大好きです。安心してご相談くださいね。

取材・文:白尾芽(voids)
写真:加藤甫

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