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泰生ビル 入居者ファイル#25 清水久美子さん(チーム45カイ)

「泰有社」物件に魅せられた人々を紹介する「入居者ファイル」シリーズ。今回は、泰生ビルのWEB制作会社「チーム45カイ」の清水久美子(しみず・くみこ)さんにご登場いただきます。

白い床材に、赤いソファやダーツが映える泰生ビルの一室。清水久美子さんが代表取締役、本谷健さんが取締役を務める「チーム45カイ」のオフィスだ。今回は、本業はもちろんのこと、オフィスをオープンにしながらのコミュニティづくりにも積極的に取り組んできた清水さんにお話を聞いた。

地域のコミュニケーションを生み出す拠点に

WEB制作や映像制作を含むプロモーション事業、アプリ・WEBサービスなどの開発事業を手がけるチーム45カイ。清水さんと本谷さんは現在の部屋に入居する前から、社名の通り泰生ビルの「4階」と「5階」を行き来していたという。
 

家族の影響で、幼い頃からパソコンに慣れ親しんでいたという清水さん。大学時代はデジタル関連の専門学校をダブルスクールし、WEB制作などの知識を身に着けた。その後はいくつかの会社を経て独立し、チームを組みながら東京や横浜でインターネット関係の仕事に携わるようになる。

清水さん

泰有社コミュニティとの出会いのきっかけは、現在は5階で「自在関内オフィス/アートスペース「と」関内」として活動する今井嘉江さんだ。インターネットが一般家庭に普及する過渡期、地域のつながりが薄れていく状況に立ち会っていた学生時代の清水さんは、今井さんの子育て事業に出会った。「私は大学で心理学を学んでいたこともあり、これからの時代は子育てより親育てが大事だと考えていたんです。今井さんは、大人のための居場所もつくっていました。学校や会社での人間関係だけではなく、地域のコミュニケーションのための場所が重要だという今井さんの考え方に、共感しました」。
 

そして今井さんのもとで本谷さんと出会い、会社を立ち上げた。はじめは今井さんの部屋を拠点にし、4階に移ってきたのは2012年のこと。「仕事とコミュニティづくりを両立したかったんです。普通のオフィスをオープンにすることは難しいですが、ここではそれができる。とても良い環境だなと思いました」。

縁側みたいなオフィス

「自分で場所をもつなら、さまざまな人が集う昔ながらの縁側のようにしたい」。DIY好きな本谷さんのアイデアもあり、その思いは部屋にも反映されている。石材を使った床や、大きな天板の机などはすべて手づくりしたもの。開かれていて居心地がよく、かつ仕事に集中できるオフィスにするために、いまも新陳代謝を続けている。

1枚6kgもあるという床の石材は、昼休みに集う人たちが総出で運び込んだ

現在はコロナ禍もあり一時休止しているが、2019年末まではオフィスを開放していた。「会社など以外にも居場所を必要としている20代・30代の人が、お昼の休憩時間や仕事が終わった後に集まれる場所。居酒屋やバーではなく、何をしてもいいフリースペースとして使ってもらいました。まったく違う職種の人が集まって、そこでコラボが生まれたら面白いなと考えていました」。
 

業務に参加しながら、一時的な拠点としてオフィスを使う人もいる。世界中の鍛冶職人にインタビューをして写真を撮るカメラマンや、画家として生きていく夢をもつアーティストなど、美術系が多い。ここを拠点にしながら巣立っていった人も多く、清水さんは「音沙汰がなくなったら、卒業したんだなと思いますね」と笑う。

上は石倉潤さんの写真集『野鍛冶』、下は吹きガラス作家による作品

ラグビーもまずは「やってみる」

清水さんたちは、こうしたライフワーク的な活動と並行して、普段はWEB関連の業務を行う。両者の軸は変わらず、フットワークの軽さが強みになっている。
 

最近はウェブに加え、映像やアプリケーションの制作をセットで引き受ける場合が多い。多岐にわたるクライアントと仕事をするうえで大切にしているのは、「専門ではない視点から見てつくること」。「私たちはまず長い時間をかけてコンサルティングをします。たとえば病院のサイトなら、どうやったらみんなが病院に来やすくなるか、ということから考えていく。情報がわからない人に向けて発信するので、わからない立場から色々質問をするんです。それをウェブプロモーションに落とし込むことを心がけています」。

もっとも印象に残っている仕事は、ラグビーワールドカップ2019神奈川・横浜のプロモーションだという清水さん。2年前から準備を始め、県と市のラグビーチームの取材をしたり、社会人ラグビーが趣味の本谷さんを中心にチームを組んで素人ラグビー大会に出たりと、実際にやってみることで熱気を伝えようとした。「はじめは全然ラグビーを知らなかったんですが、だんだんハマっていきましたね。ファンゾーンでたくさんの人がラグビーを観戦している姿を見たときは、やった甲斐があったなと本当に感動しました」。

人が集まる場所を生み出すアイデア

清水さんは、泰有社コミュニティでもイベントを多く企画している。入居した当時には、泰生ビルの屋上を使い「洗濯物を干す」という名目の宴会を開いたことも。たまたま新品のパンツを400枚持っていたアーティストの提供により、大きな洗濯物のかまくらをつくった。
 

季節ごとにテーマを決め、1人のアーティストに部屋の演出をお願いしたこともあるという。真冬にはプロジェクターで雪を降らせ、大きなテントのなかで鍋を囲んだり、あるときは花魁をテーマにした真っ赤な演出で、それに合った料理をケータリングしたりと、どれも楽しそうな企画だ。「ここでこんなことができるんだと、来た人たちも刺激を受けていました。片付けは大変だけど、私の仕事のモチベーションにもつながります」。
 

しかし、現在はこうしたコミュニケーションも難しくなってしまった。清水さんはこの体感を、ちょうど自身がインターネットに足を踏み入れた時期と重ねている。「また“縁側”的なものがなくなりつつあり、コミュニケーションのあり方が変わる時期に来ている。なので、次の世代、新しいことができる人たちにどんどん任せていくことも重要だと思います。どちらにしろ1人では考えられないことなので、みんなで積極的に色々な試行錯誤をしていきたいですね」。
 

仕事やコミュニティづくりを、生活と地続きにとらえている清水さん。コロナ禍も収束の兆しを見せるなか、面白いアイデアで多くの人が集えるときが来るのを楽しみに待ちたい。

PROFILE
チーム45カイ
Webサイト・グラフィックデザイン・映像等の制作、プロモーションの提案および企画、DX化のためのシステム・アプリケーションの設計開発を行う。
2012年創立以来、ラグビーワールドカップ2019TMなどのイベント、士業、病院及び医療、エネルギー関連会社、官公庁など、様々な業種のWEB企画制作・プロモーション・アプリ開発を手掛けている。

取材・文:白尾芽(voids)
写真:大野隆介(*をのぞく)

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