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泰生ポーチ 入居者ファイル#30 肉蕎麦屋「壱」/パン屋のオヤジ

「泰有社」物件に魅せられた人々を紹介する「入居者ファイル」シリーズ。今回は、泰生ポーチ1階をシェアしながら営業する肉蕎麦屋「壱」の吉田期夫(よしだ・のりお)さんと、コッペパン専門店「パン屋のオヤジ」の鳴海加奈子(なるみ・かなこ)さんにお話を伺いました。

パンと蕎麦、異色のシェア

2階〜4階の12部屋で編集、デザイン、建築、アートなどさまざまな分野のクリエイターが活動している泰生ポーチ。彼らや近隣で働く人々の胃袋を支えるのが、1階でランチタイムに営業する「パン屋のオヤジ」と肉蕎麦屋「壱」だ。店頭でコッペパンや石巻食材のお弁当、お好み焼プレートを販売し、店内では蕎麦を提供する少し変わったスタイルで営業している。
 

1階「泰生ポーチフロント」は、生きづらさをもつ若者の段階的自立支援を行うNPO法人ヒューマンフェローシップ(K2インターナショナルグループ)、学習指導放課後学童機能を担う「ピクニックスクール」を運営する株式会社ピクニックルーム、イベントスペースとして活用するNPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボの3事業者が運用している。もともと昼時はヒューマンフェローシップが運営するパン屋のオヤジがテイクアウトとイートインの両方で営業していたが、昨年から休業日に肉蕎麦屋「壱」が営業を始め、現在では平日のランチタイムを2店舗でシェアする形となった(パン屋のオヤジは火曜〜金曜のみ)。

さまざまな形の蕎麦屋、実験の場として

本格的な蕎麦屋の味とたっぷりのボリューム、食べ放題セルフメニューの漬物やご飯が嬉しい肉蕎麦「壱」のランチ。つけ汁は味がしっかり付いていて、ご飯がよくすすむ。最近ではセルフメニューにデザートのプリンも加わり、さらにさまざまな客層が喜ぶお店となっている。

「壱」豚ラー油汁つけ蕎麦(1,000円)。つけ汁にはラーメン店でヒントを得たという化粧油を垂らしているため、湯気が出ず保温効果があり、撮影後も温かいまま美味しくいただいた

本店「本格手打ち蕎麦・酒・蕎麦割烹 壱 クラシック」はもともと泰生ポーチのすぐ近くで営業し、現在は馬車道に移転。「美味しくお酒を呑むための蕎麦と蕎麦屋のツマミ、料理が美味しくなるような酒」を提供することをコンセプトに、夜のみの営業を行っている。店主の吉田さんは20代から飲食業界で働き、35歳で独立。「蕎麦屋のツマミはしっかり塩やしょうゆをきかせるので、お酒をスーッと飲ませてくれます。本店ではかまぼこや海苔など良い食材を使って、昔ながらのツマミを提供しています。蕎麦屋酒の真髄に迫ってみたかったんです」と語る。
 

市役所の移転やコロナの影響もあり、ターゲット層に満足してもらえる真摯な店作りだけでなく、常にビジネスとして持続可能な形を模索している吉田さん。泰生ポーチへの出店は、もともと本店の顧客だった泰有社の伊藤さんに相談したことから決まった。「時代が変わっても対応していけるように、新しい客層を開拓していって違う営業形態を増やしたいと考えています。こちらは腰を軽く、ウマいのが一番!といったノリでやっているので楽しいですね」。

肉蕎麦「壱」店主の吉田期夫さん

今後は肉の種類を増やしたり甘味を充実させたりと、いろんな楽しみ方に合わせてさまざまなことを試していきたいと話す。

朝ごはんにもお土産にも。バリエーション豊かなコッペパン

コロナ禍で一時的な休業もあったものの、火曜〜金曜の朝〜午後に引き続き営業しているコッペパン専門店「パン屋のオヤジ」。根岸の本店から届くできたての手作りコッペパンと、曜日によって石巻の食材を使用したお弁当やお好み焼きプレートも販売している。壱が営業を開始する前の朝8時~10時半は、イートイン対応も継続している。
 

開店当初からの不動の人気メニューは「フィッシュフライタルタル」と「カスタード」。K2インターナショナルの鳴海加奈子さんによると、この2年で人気が爆発しているのが「黒胡椒香るスペアリブ」で、関内の秋のお祭り「ハイカラフェスタ」でも一番人気のメニューだそうだ。加えて、季節のメニューも欠かさず用意している。

約190円〜470円のリーズナブルで幅広いラインナップが楽しめる

当初はパン屋のオヤジの休業日のみ「壱」が営業していたが、シェアで同時に営業するようになり、蕎麦を食べたお客さんがお土産としておやつコッペを買って帰れるようにと、ラインナップも少し変化させている。
 

百貨店催事などのイベントにも積極的に出店している同店では、そうした機会に知ったお客さんがわざわざ泰正ポーチ店に足を運んでくれることや、泰正ポーチ店で購入したお客さんが根岸駅前本店や催事に来てくれることもあるそうだ。地域に勤めるお客さんが会社で広め、大口予約を入れてくれたこともあった。コロナ禍でイベントやケータリングは減ってしまったが、復活していきたいと鳴海さんは話す。

泰生ポーチ フロント内観

地域のつながりと双方の理解で実現したシェア営業。常に美味しさと満足度を追求して試行錯誤を続ける両店の今後の展開も楽しみだ。

肉蕎麦「壱」
営業日:月〜金
営業時間:11:30〜14:00
 

パン屋のオヤジ
営業日:火〜金
営業時間:8:00〜14:00

PROFILE
パン屋のオヤジ
NPO法人ヒューマンフェローシップが運営するコッペパン専門店。同店は就労継続支援B型事業所に認定されている。
不登校・ニート・引きこもりなど生きづらさを抱える若者や様々な障がいにより自立や就労に悩む若者へ、安心して住むことができる居住環境と、それぞれの適性に即した就労支援を提供・サポートしています。
 

肉蕎麦「壱」
都内、鎌倉の蕎麦屋で修業を終え、関内の地に自身で経営する蕎麦屋(壱)を2013年に開業。泰生ポーチ近くにあった本店はビルの老朽化の為退去し、現在は馬車道に移転のうえ営業中。その際店名にクラシックの言葉を追加し、より本格的な昔ながらの蕎麦屋酒の提供にまい進中。

取材・文:齊藤真菜
写真:大野隆介

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