2階から4階までの12部屋にさまざまな分野のクリエイターが拠点を置く「泰生ポーチ」。関内桜通りに面した1階は、2018年8月からのプレ期間を経て、この4月から正式に「泰生ポーチフロント」として3事業者が共同運営しています。今回は、生まれ変わった関内一等地のコミュニティスペースでの最新事情をレポートします。
飲食店×子どもの居場所×イベントスペース
火曜〜金曜の朝〜午後はコッペパン専門店「パン屋のオヤジ」、月曜~金曜の午後〜夕方は小学生の放課後支援事業「ピクニックスクール」、平日夜と土日は「横浜コミュニティデザイン・ラボ」が管理するイベントスペース。界隈の起業家やクリエイターの協働の場、交流の場としての機能も担う、泰有社の関内のネットワークのハブとなる場所でもある。
「パン屋のオヤジ」を運営するのは、生きづらさをもつ若者の段階的自立支援を行うNPO法人ヒューマンフェローシップ(K2インターナショナルグループ)。根岸の本店から届くできたての手作りコッペパンは、「はちみつマーガリン」や「チョコカスタード」といったシンプルな甘いものから「ハムカツミルフィーユ」「トマトソースハンバーグ」などボリュームたっぷりのおかずパンまで毎日30種類以上のラインナップがあり、値段も170円〜400円とリーズナブルだ。イートインには、嬉しいコーヒーのサービスも付いている。
14時以降は、学校が終わり、近隣に親が勤務する子を中心とした小学生が集まってくる。学習指導、放課後学童機能を担うピクニックスクールは、向かいの泰生ビルで2017年から株式会社ピクニックルームが運営してきた保育園「ピクニックナーサリー」との連携事業だ。2つのビルの入居者をはじめとした関内エリアの大人たちにも参画してもらい、夏休みには昼のコッペパン店の営業も手伝うなど、子どもたちの社会授業の場にもなっている。
平日18時以降および土日は、セミナーや懇親会、キッチンを使った料理イベント、映画の上映会など、さまざまなイベントが開催されている。現在定期的に開催しているのは、福島・気仙沼・岡山などの地酒や郷土料理を提供し代金の一部をその地方の活性化に役立てる「地酒Barふろんと」(毎月第2・第4木曜と金曜)、フレンチトーストの会、アクセサリの展示販売ほか。
イベントスペース利用担当の室賀ゆり子さんは「これまでつながりのあった方だけでなく、新規の問い合わせも多いです。閉店してしまった近所の飲食店から、クロージングパーティーができなかったからここでやりたい、といった連絡をいただくこともあります。夜や週末だけでなく、パン屋さんの時間帯にもプチコンサートがあったり、朝活の研究会があったり。気付いたらいろんな試みが始まっているのが面白いですね」と話す。
シニアのニーズも汲み取り多世代拠点へ
近隣ビルのクリエイターや民間団体のほかにこの場所を使っているのが、関内まちづくり振興会や地元の自治会だ。関内まちづくり振興会は、毎月定例会のほかに行政職員や地域貢献に関心のある企業を招いた研究会「まちづくり部会」を開催している。また、JR関内駅の海側には地域ケアプラザがないことから、シニアが集まれる催しを町内会で企画。閉店した老舗飲食店の店主に昔の関内の写真を借り、投影しながら語り合う会を開いた。
横浜市庁舎の移転で関内地区全体が大きく変わりつつある中、ビジネスマン、地域住民、古いビルに活動の場を見出すクリエイターたちがあらゆる角度から関わるのりしろを持つこの場所が、今後のまちづくりにどのように影響していくのか。ぜひイチ利用者や企画者となって、参加しながら見守ってほしい。
取材・文・写真/齊藤真菜
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