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泰生ビル
泰生ビルの屋上を緑化する「TAISEI GARDEN Project」、オープンパーティーをレポート!

泰生ビルの屋上で取り組んでいる、屋上緑化の“TAISEI GARDEN Project”。泰有社ではこの場所を、街にコミットする屋上にしようと2017年から緑化を試みてきた。だがメンテナンスの難しさから緑化のシステムそのものを見直すことになり、2019年の夏ごろからgrobe株式会社の吉田健二さんが、ZASSO(雑草の中でも価値のあるもの)の特徴を活かした緑化計画を進めている。去る10月27日(日)に、現状の泰有社物件に入居するアーティスト・クリエイターを対象に、屋上の様子をお披露目するオープンパーティーが開かれた。その様子をレポートしよう。

“TAISEI GARDEN Project”のはじまりと再緑化

青々と茂るシロツメクサや、高くのびたねこじゃらし。10月の終わり、秋の季節に茶色く色づいた草と、緑の草が入り混じる泰生ビル屋上の芝生エリアは、ちょっと一息、腰を下ろしたくなるような場所になっていた。
 

通常ビルの屋上で見かけるのは、エアコンの室外機や、看板の広告、エレベーターの機械室といった風景だ。関内エリアでは泰生ビル、泰生ポーチ、トキワビル/シンコービル4棟の不動産オーナーである泰有社には、「街にコミットする屋上にしたい」という思いがあった。
 

そこで屋上で緑化をし、CO2の削減やヒートアイランド現象を抑えるなど一定の条件を満たすことで助成金が下りる、公益財団法人高原環境財団の助成事業に申請をすることになった。めでたく助成金を取得して、2017年には泰生ビルの屋上を芝生にしたが、管理や灌水システムの不備などが要因となり、1年で芝生が枯れてしまったのである。

左:伊藤康文さん(泰有社)、右:吉田健二さん(grobe株式会社)

「泰生ビルにはピクニックルームという団体が入居してくれて、保育所ができたんです。子どもたちが屋上を園庭にして、遊ぶ場としても使われるようになりました。そういった場所にもなりつつあったので、枯れっぱなしにしているのももったいない。一方で、2018年度の終わりには、関内地区市街地緑アップ推進会による緑化事業として、泰生ビルの壁面緑化のプロジェクトを吉田さんにプロデュースしてもらいました(※関内GREEN DAY!記事参照)。そういった流れもあり、泰生ビルの屋上も吉田さんに依頼して、再緑化に取り組んでもらうことになりました。今回の取り組みがいろいろなところへ飛び火して、屋上の緑化や関内の街の緑アップにつながっていけばいいなと思っています」(泰有社・伊藤康文)
 

泰生ビルの屋上をZASSOで緑化することには、どのようなメリットがあるのだろう? 街中を散策しながらZASSOを知るUrbanWalk ZASSOなど、植物を体験するワークショップを開催している吉田さんに、お話を聞いた。

 

「892種に及ぶ雑草の中でも、価値があるものをZASSOというオリジナルの名前を付けて呼んでいます。ZASSOは100種類ぐらいに及びます。例えばよもぎなど食べることのできる雑草や、きれいな花が咲き観賞する価値があるタンポポなどの雑草、こういったものがZASSOです。ZASSOはメンテナンスがあまり必要ないので、ある程度手放しでも緑のじゅうたんができあがります。その特性を活かし、泰生ビル屋上の再緑化に取り組むことになりました。これまでもこの屋上は、親睦会やヨガの教室、イベントなどに使われてきましたが、今回の再緑化をきっかけにさらに活用される場所になっていくことを目指しています」(grobe株式会社・吉田健二)

ZASSOによって再緑化された泰生ビルの屋上

メンテナンスがあまり必要ないとはいえ、ここには6か所にスプリンクラーが設置されている。土の下を這うようにしてホースが張り巡らされ、水源の蛇口にはタイマーをセット。毎朝決まった時間に水がまかれ、自動の灌水システムで屋上全面の水やりを実現しているのだ。
 

現在の屋上には、実際にどのようなZASSOが育っているのか。この日も吉田さんは参加者たちに向け、生息する植物を知るUrbanWalk ZASSOを開催した。

スプリンクラーのホースの先が少し高くなっているので、子どもたちが転ばないように土で覆って丘にして、そこにシロツメクサを敷き詰める工夫が。

今回の再緑化に向けた動きは、2019年の夏からスタートした。再緑化で新たに植えたのはシロツメクサの1種のみ。それ以外は元からあった芝やZASSO、そして新たに飛来するなどして根付いたZASSOで、今の芝生ができあがっている。
 

シロツメクサを植えるための草抜き、種まきは、先のピクニックルームの保育園や学童保育に通う子どもたちが参加して、泰生ビルや泰生ポーチに関わる人たちとともに作り上げた。シロツメクサを植えたおかげで、芝がはげて土が見えてしまっていた屋上も、10月半ばごろには青々とした緑で息を吹き返したようになった。

眺めたり触れたりしながら、吉田さんの説明を受けてZASSOの知見を深める参加者たち。

シロツメクサを植えた後、吉田さんは芝の表面に「芽出し土」を1~2㎜程度まき、ZASSOを生やすための加工を施した。「芽出し土」にはZASSOが芽を出しやすい土が特殊ブレンドされており、ビル屋上の積載重量を考慮した分量の土を全面に敷き詰めている。その結果、吉田さんが予期していなかったZASSOも生えたり飛来したりしてきたという。

スベリヒユ(学名:ポーチュラカ)。食べることができ、山形県では野菜として知られているという。夏秋には花が咲く。
カタバミ(学名:オキザリス)。ハート形の葉っぱでかわいいZASSO。花の苗も多く開発されている。日本古来のZASSOのため、家紋にも使用されている。

泰生ビルやトキワビルに入居する、アーティストやクリエイターが集まったTAISEI GARDEN Project オープンパーティー。泰有社の伊藤さんとgrobe吉田さんの概要説明のあと、参加者たちはUrbanWalk ZASSOを楽しんだ。その後は近況を話したり、情報交換をしたりしながら、みな思い思いの時間を屋上で過ごした。
 

ピクニックルームの子どもたちが園庭として活用できるのはもちろんだが、これまで以上にアーティストやクリエイターの交流も、屋上の活用をとおして生まれそうだ。

泰生ポーチに入居するMATSUMOTO COFFEE ROASTERSさんのコーヒースタンドも出店。参加者たちにあたたかくておいしいコーヒーがふるまわれた。
屋上でくつろぐ参加者たち。人が集まると風景が変わる。
吉田さん直伝の「ZASSOポーズ」で集合写真! これからの泰生ビル屋上の活用が楽しみだ

取材・文:及位友美(voids)
撮影:中川達彦(ライトハウス)

[イベント概要]
「TAISEI GARDEN Projectオープンパーティー」

日時:2019年10月27日(日)12:00〜15:00
場所:泰生ビル屋上
プログラム
12:00〜13:00 ランチタイム(自由時間)
13:00〜13:15 TAISEI GARDEN Project主旨説明、泰有社伊藤さんより一言
13:15〜13:30 現状の植生についての詳細説明(UrbanWalk ZASSO)
13:30〜15:00 ピクニックタイム(自由時間)
15:00〜片付け開始、撤収終了

出店ブース(緑化と反対側の屋上)
・MATSUMOTO COFFEE ROASTERSさん(泰生ポーチ入居者)によるコーヒースタンド
・告知物配置ブース(ポスターやチラシ等を皆さんが自由に持ってきて置けるブース)

その他泰生ビルについてはこちらから