2009年から始まった、横浜市中区の関内外エリアを中心に活動するクリエイターの文化祭「関内外OPEN!」。今年で16回目の開催となった「関内外OPEN!16」のテーマは「いっかい集合!また今度!」だった。天候にも恵まれた2024年11月3日(日)、関内桜通りを中心に5つのプログラムが行われ、会場はにぎわいを見せた。その一部を紹介する。
また、あいさつを交わせる関係に。「テーブルトークパーティ」
横浜市の創造都市政策によって多くのクリエイターが仕事場を構えるのが、この横浜市中区の関内エリア。クリエイターが、その創造性をもって地域と市民ににぎわいをもたらす文化祭のようなイベントが、2009年から続く「関内外OPEN」だ。関内に建つ泰有社物件に入居する人たちも例外ではなく、建築やデザイン、編集・ライティング、ファッション、まちづくりなど、各領域で活躍する人たちがイベント主催や協力を買って出ていた。
歩行者天国となったメイン会場の関内桜通りは、赤いじゅうたんを敷いた約15メートルのランウェイや、その脇に連なるマルシェ、人の胸の高さほどあるボールにCDを貼り付けたミラーボールなどで装飾され、華やかな姿に。まだ設営準備の慌ただしさが感じられる午前11時、会場に置かれたカウンターテーブルに集まる人たちがいた。
なにげなく始まったこのプログラムは「テーブルトークパーティ」。参加者がテーブルを囲み、それぞれにあいさつや自己紹介を始めている。主催者のひとりで、泰生ビルの「さくらWORKS<関内>」に勤めていた姜美宇(かん・みう)さんは、この企画への思いを話す。
「この通りを行き交う人たちが、あいさつと言葉を交わし合い、また再会できる文化をつくりたくて、この場をひらいています。お互いのやっていることについて説明しあうとか、『今度、オフィスにお邪魔してみたい』といった、そんなコミュニケーションを生む最初のきっかけになってほしいです」
関内外OPEN!16のテーマ「いっかい集合!また今度」を象徴するこのプログラムには、泰生ポーチに入居するグラフィックデザイナーの三浦佑介(みうら・ゆうすけ/design office shubidua)さんや市内の文化芸術拠点「黄金町エリアマネジメントセンター」、「若葉町ウォーフ」の関係者などが顔を合わせた。「普段はなにをされているんですか?」「横浜出身?」「ええっ、演劇の脚本を書いているんですか。すごい!」とお互いの情報や名刺を交換するなど交流が生まれていた。
恒例! トキワ/シンコービルの「オープンスタジオツアー!」
建築家や編集者が多く入居する「トキワ/シンコービル」では、正午から「オープンスタジオツアー」がスタート。ツアーコンダクターとともに参加者がクリエイターの仕事場を見学する恒例のイベントだ。
ツアーコンダクターは昨年と同様に、建築家ユニット「CHA」の原﨑寛明さんと、「株式会社ボイズ(voids)」のグラフィックデザイナー・岡部正裕さん。11人の参加者(飛び入りをのぞく)を連れて、7カ所の仕事場をめぐった。入居者は資料や写真を使って自分の仕事についてプレゼンし、参加者からの質問に答えた。
スタジオツアーを目当てに東京都から来たという男性と女性の2人組に話を聞くと、女性は「10年くらい前にも参加したことがあったので、また参加したいと思っていた」と言い、「関内」「イベント」といったワードで検索してツアー参加を申し込んだと話す。連れ立ってやって来た男性は建築関係の仕事をしていて、「古いビルを壊してしまうのは簡単だけど、コミュニティ活動やリノベーションで付加価値をつくる方法がおもしろい」と話してくれた。
みんなが主役。「変身!WORK SHOP」と「カンナイガイコレクション」
関内桜通りのランウェイでは、午前11時から午後2時の間、アフリカ布小物や特製の衣装、色紙でつくるアクセサリーで変身できるワークショップが5つ開催されていた。
横浜市を拠点とするアーティストの宇田見飛天(うたみ・ひてん)さんが企画した「あなただけのファントムマスクを作ろう」では、参加者の女性がファントムマスクの型紙に沿ってキャンバス地を切り、好きな模様を描いている。女性は「原宿ファッションみたいな派手で個性的なファッションが大好き」と話し、自分だけのファントムマスクをつけて笑顔を見せてくれた。
「変身!WORK SHOP」の参加者や企画者はその後、午後2時15分から始まるファッションショー「カンナイガイコレクション」に向けてスタンバイ。DJがかける大音量の音楽のなか、参加者がランウェイを闊歩。見学する人に手を振り、カメラに向かってポーズを決めていった。
参加者が歩くあいだにアナウンスで場を盛り上げたのは、泰生ポーチに入居する元キャスターで「ライフデザインラボ」代表の船本由佳さん(ふなもと・ゆか)さん。「このコレクションを通じて、横浜の地で働く、そして協働を続ける皆さん同士が新たなつながりを育み、これからの横浜をさらに活気づける新たな出会いを生み出すことを心から期待しております」と、歩く人たちの活動紹介を絡めながら、プログラムに込められた思いを伝えた。
ファッションショーの終盤では、関内外OPEN!の主催経験もあるスタジオニブロールの安食真(あんじき・まこと)さん、横浜市都市整備局「横浜都市デザイン室」の桂有生(かつら・ゆうき)さん、オンデザインパートナーズのメンバーら、横浜のまちづくりに貢献する人たちが登場。観客に一言ずつあいさつの言葉を発し、観客も応えるように歓声を上げた。
「いっかい集合!また今度!」というテーマのもと、クリエイターが“まち”へのあいさつをさまざまな方法で表現した、祝祭のようなこの一日。また今度、こんな場にであえる日が楽しみだ。
取材・文:中尾江利(voids)
写真:中川達彦