2023年2月18日(土)・19日(日)に、GM2ビルのニューヤンキーノタムロバで開催された「ゼロフェス」。住人たちがゼロからつくりあげ、1年間の集大成となった大盛況のイベントをレポートします!
ニューヤンキーノタムロバとは?
昨年4月、弘明寺・GM2ビルにオープンした「クリエイティブ最大化共創型コリビング」。
暮らしに関わる企画開発プロデュースやまちづくりなど横浜を拠点に新たな住まい方・働き方の提案を行ってき、たYADOKARIがプロデュースを手がける。
設計は、弘明寺商店街の水谷ビルに入居するAKINAI GARDEN STUDIO が担当。住人たちとコミュニティビルダーが1年間限定で共に暮らし、それぞれの個性を磨くことを目的とする。
店舗や事務所が入り、まちに根ざしたビルでありながら、アーティストのアトリエとしても利用されるなど、近年クリエイティブの発信地ともなっているGM2ビル。その4階に位置するタムロバは、あたたかい居心地の良さと、修悦体(佐藤修悦さんによるガムテープ書体)で散りばめられた熱いメッセージが混交する不思議な空間です。1年間の集大成として行われたゼロフェスは、12人の住人と1人のコミュニティビルダーによる展示や、トーク、フリマ、そして最終日には住人全員が参加する演劇など盛りだくさんの内容に。「I(あい)とは何か」というテーマ通り、まさに住人たちの「 I 」があふれた空間となりました。
今年のタムロバの顔とも言えるのが、コミュニティビルダーのダバンテス・ジャンウィルさん(通称ダバちゃん)。「知らない人同士をつなげるのが好き」というダバちゃんは、自分の役割を“おせっかいなやつ”だと説明します。「住人はみんな何かを求めてここに来ているんだ、という実感があった。だからそれぞれのやりたいことを一緒に描いていけるように対話を重ねていきました。卒業後すぐというより、2~3年後に、あのときダバちゃんと話してよかったな、とみんなに思ってもらえるような人になろうと心がけていましたね」。しかし、ときには“嫌われ者” になることも。「毎週の集会とかワークをやる時間には、なんでやらされてるの?という声も聞こえてきた。でもそれは本当に大事なことだったと思っていて。次にコミュニティビルダーになる人も、嫌われる覚悟で人にアプローチしていってほしい」。走り出したばかりのタムロバをどう動かしていくかは、試行錯誤の日々でした。「最初はみんなで一丸になろうと頑張っていたけど、やっぱり自分が疲れてしまいました。いまはそれぞれがやりたいことに向かった先で一丸になれたらいいと考えていて、ゼロフェスではそれが実現できたと思います」。
会場は、タムロバでの1年間の軌跡をたどるような展示構成に。 1階から4階に続く階段には、それぞれが1年間のできごとを思い出して書いたという日記が並びます。ドアを開け、住人たちが社会に感じる不満を吐露した言葉が並ぶ廊下を通り抜けると、開放的なリビングダイニングが。その横の秘密基地のようなアジトには、ダバちゃんが住人たちと行ったワークの成果や、それぞれの負の思い出に結びつくモノ、そして個人インタビューの映像など、住人たちが1年を通して葛藤しながら自分に向き合ってきた過程が垣間見えます。
「 I(あい)」というテーマについて、YADOKARIに所属するプロジェクトマネージャーであり住人の中谷優希さんはこう語ります。「1年間何をしてきたのか、これから何をしたいのか明確にわからないというメンバーも多くて、それには自己理解が必要だと考えました。ゼロフェスをゼロからつくるなかで、まず私という意味の I、そして自分を見つめるeyeや、自分を愛する、個性を認める愛とか、色々な意味が込められています」。住人たちの活動は、写真、山登り、AR、言語研究、3DCGデザイン、料理、美容師、演劇などさまざま。この1年間を経て卒業した後が、タムロバの本当の成果だと言えそうです。これからの住人たちの活動にもご期待ください!
蒲原昇平(しょうへい)
『The inside of heart out of sight』
今回は壁に貼ったコードを読み取るAR作品を実験的につくりました。いまはデバイスが追いついていないから読み込みに時間がかかりますが、5年後には広告などで当たり前に使われているはず。例えばいまは広島で被爆時の様子を体験できるVRなどが発表されていますが、これからARでも開発が進んでいくと思います。
平野知菜(ちな)
『人に語らなかった退職動機』
タムロバでは私を含めて11人が退職を経験しているので、「人に語れる」建前の退職動機と、「人には語れない」本音をみんなに書いてもらいました。自分も3月に保育園を辞める予定で、その前に嫌な思い出にも目を向けておきたかったんです。それから私といえば山!タムロバに入る前に、滑落して骨折も経験しました。山登りって、人間の色んな叡智を結集して自然のなかで遊ぶということで、傲慢だけどすごくアツいですよね。
Soriano Laura(ローラ)
『日本語の進化研究』
私は言語の研究をしていて、今回は来てくれた人に写真を見せて、それを何と呼ぶか書いてもらう、カタカナ言葉に関するワークショップをやっています。例えばこれは「キッチン」とも言われるし「台所」とも言われますよね。20代の人は漢字で書いたものが多かったけど、60代の人は全部カタカナ言葉だった!面白いでしょう?
長沼航(ビリー)
『タムロバシアターの墓場』
普段は俳優として、散策者とヌトミックという2つの劇団に所属しながら舞台芸術に関わっています。今回はタムロバのみんなが出演する演劇をつくりました。生活の行為を再現したくて、部屋に帰ってからお風呂に入るまでのなかで「こういう順番がある」「窓を3センチだけ開けて出る」とか、そういう細かいポイントを素材にしました。タムロバのみんなとはすごく仲が良いわけではないけど、一緒に暮らしているから話せることもあって、そういう生活が作品になっています。